令和4年度の診療報酬改定の答申が発表されましたね!
毎回のことだけど、社会福祉士の文言がどれぐらい入っているかマニアックにチェックしています。
記事の内容について
- この記事で注目したのは、「入退院支援加算」についてです。
- ヤングケアラーへの支援が盛り込まれましたね。ここでは、地域福祉に関わっているソーシャルワーカーの視点から、医療機関の社会福祉士の活躍について触れています。
記事の信頼性
医療・高齢・地域福祉でソーシャルワーカーとして、対人援助職20年になります。現職は、地域福祉機関で管理者をしています。
社会福祉士養成校等で、社会福祉士等の養成に関わって8年。
有資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、公認心理師。
今回の診療報酬改定では、多くの社会福祉士の文言を見ることができました。
私がMSWとして勤めていた10年前とは随分と項目も増えたなあと思います。
医療機関における社会福祉士の信用が高まっている証拠ですね。
すばらしいことです。
入退院支援の見直しについて
入退院支援加算については、次の通りです。
今回の改定では、図1の真ん中にある≪入退院支援の対象となる患者≫の対象が見直されました。
対象者には、以下の項目が追加されています。
- 家族に対する介助や介護等を日常的に行っている児童等であること
- 児童等の家族から、介助や介護等を日常的に受けていること
これは、福祉、介護、医療、教育等の関係機関が連携し、ヤングケアラーを早期に発見して適切な支援につなげるための取組の推進が課題となっており、今回の入退院支援加算の新たな位置づけとなりました。
ヤングケアラーの支援について
この大本の、「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」の資料をみてみましょう。
この資料からは、ヤングケアラーの支援にあたっては、ソーシャルワークを基盤にする専門職への期待が寄せられていることがわかります。
また、他の資料を見ると、「表面化しにくいのがヤングケアラーの問題だ。」と論じられています。
私は、地元のソーシャルワークの研修会で濱島先生とふうせんの会の当事者の方のお話を聞く機会がありました。
その中で、大変印象深かったのは、「見えづらい」というそのヤングケアラーの実態です。
また、当事者の方も、感情的のサポートを含めて「大変だけど・家族のこと」といった複雑な思いを抱いていることが伝わってきました。
ヤングケアラーの実態については、同氏のまとめた書籍「子ども介護者 ヤングケアラーの現実と社会の壁」をおすすめしたいと思います。
これまでの退院支援加算の意味合い
これまでの退院加算の意味合いは、社会福祉士が関わることでの
『スムーズな退院、長期入院を抑制して在院日数を引き下げる』
という国の方策の一環でした。
この加算の出始めは、懐かしい話ですが、後期高齢者退院調整加算だったと記憶しています。
当時はとても限定的な加算でした。
それが、退院調整加算→退院支援加算→入退院支援加算と名称を変えて、これまで変遷してきました。
そこに、今回のヤングケアラーを早期に発見する取り組みが位置づけられたのですが、これは、今までとは意味合いが異なるという印象を持っています。
地域福祉の視点から、今回の改定を考える
地域社会に向けた役割
この新たな要件は、「表面化しにくい問題を捉えて支援」するというものです。
この役割は、院内に向けた役割よりむしろ、地域社会に向けたソーシャルワーカーの役割としての期待が大きいのです。
平成30年から「入退院支援加算」と見直されて、その加算の位置づけは変化しました。
「病気になり入院しても、住み慣れた地域で継続して生活できるよう、また、入院前から関係者との連携を推進するために、入院前や入院早期からの支援の強化や退院時の地域の関係者との連携を評価。」
と改められており、単純に在院日数の短縮という意味ではなくなっていましたが、当時の改定では、入院前の評価がクローズアップされており、地域への視点はあまり含まれていませんでした。
では、なぜ今回の改定で、地域社会に向けたソーシャルワーカーの役割としての期待が大きくなったのでしょうか?
社会福祉法の改正
この数年の他法の動きを見ていきましょう。
「地域共生社会」が平成29年に示されました。
また、社会福祉法が令和3年に改正されています。
地域共生社会の実現を目指すために「属性を問わない相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」を一体的に実施する新たな重層的支援体制整備事業が、令和3年4月からスタートしています。
重層的支援体制整備事業とソーシャルワーク機能については以下のサイトを参考にしてくださいね。
市町村の相談機能の強化がその一つですので、地域福祉のソーシャルワーカーにとっては、注目すべき法の改正と事業になります。
地域福祉のソーシャルワーカーである地域包括支援センターの社会福祉士の役割については、以下の記事にまとめていますので、ご参照ください。
そして、社会福祉法の改正の中で、医療ソーシャルワーカーに関することが言及されていることに注目しておきたいところです。
言及がみられるのは、以下の項目です。
「住民に身近な圏域」において、地域生活課題に関する相談を包括的に受け止める体制の整備に関する事項(社会福祉法法第 106 条の3第 1 項第2号関係)
市町村は、地域活動を通して把握された地域住民が抱える地域生活課題に関する相談について、包括的に受け止め、情報提供や助言を行うとともに、必要に応じて支援関係機関につなぐことのできる体制を整備するための留意点が挙げられている。
この留意点に、医療ソーシャルワーカーへの言及がある。
地域住民の相談を包括的に受け止める場を設置する際の展開方法について、在宅医療を行っている診療所や地域医療を担っている病院に配置されているソーシャルワーカーなどが、患者の療養中の悩み事の相談支援や退院調整のみならず、地域の様々な相談を受け止めていくという方法
「退院調整のみならず」という文言が非常に重要ですね。ソーシャルワーカーの役割は、退院支援だけじゃないということがこの文面からも分かります。
地域共生社会が打ち出されて、社会福祉法の改正などの流れがあり、今回の診療報酬改定だったのではないかと思えてなりません。
医療機関の社会福祉士の援助は何のためか、それは繰り返しますが
「病気になり入院しても、住み慣れた地域で継続して生活できるよう、また、入院前から関係者との連携を推進するために、入院前や入院早期からの支援の強化や退院時の地域の関係者との連携」
であるのです。
在院日数の引き下げだけではなく、地域共生社会に向けての取組なんだということを強調したいポイントになります(病院からは、早期退院を当面は求められるだろうけど・・・。)。
多職種連携や医療ソーシャルワーカーの業務指針についてはこちらを参考にしてくださいね。
国もそういった役割を、ソーシャルワークの専門職である社会福祉士に期待している表れではないでしょうか。
これからの医療機関の社会福祉士の役割について
実務を担う医療機関の医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)としてはどうでしょうか。
表面化しにくい問題にタッチしていくわけですから、表面化させた結果、当該患者の在院日数は伸びるかもしれません。
でも、そのソーシャルワークの効果は有効であったことを、しっかりと内外に証明していく必要があります。
証明していく一つの手立ては、行政や地域福祉の関係機関のソーシャルワーカーから、フィードバックをもらうことです。
「あの時、ヤングケアラーに時間をかけてくれたら、安心して地域生活ができています」
といったところでしょうか。
そして、医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)は、このようなフィードバックを受けられるような体制を、自院でしっかり整えていくことが必要なのだと思います。
これまでの強調されていた医療介護の連携だけでなく、ヤングケアラーに対応する市町村の地域福祉機関との連携も積極的に行っていくべきです。
加算要件でも、連携する機関が20→25に増えました。
また、ケアプランを診療録に保管することが加算要件にみられますが、本来この行為は、ただ単にケアプランをもらうことが重要ではありません。
医介連携によって、当事者が地域生活がきちんとなされることの裏付けです。
ヤングケアラーは現在のところケアプランはないので、しっかりと記録で落とし込むことが重要になります。
診療報酬とソーシャルワークについての記事は以下で触れていますので、参考にしてくださいね。
地域共生社会を旗印に、ますますソーシャルワーカーが活躍できるようになればと思います。
今回はここまでになります。読んでいただいて、ありがとうございます。
一緒に頑張っていきましょう!
めざし