地域包括支援センターの社会福祉士について

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悩める人
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地域包括支援センターの社会福祉士ってどんな仕事をしているのかな?

ここでは、こんな疑問に地域包括支援センターの現任者がわかりやすく答えたいと思います。

事例を具体的に紹介して、社会福祉士の仕事に迫りたいと思います。そのやりがいや魅力ついて、大変さも紹介します。

記事内容

  • 【はじめに】地域包括支援センターの概要
  • 【基本】地域包括支援センターの社会福祉士はどんな仕事?
  • 【発展】事例から学ぶ 社会福祉士の仕事
  • 【応用】地域包括支援センターの社会福祉士の仕事の大変さ
  • 【参考】平均給与
  • 【結論】まとめ

記事の信頼性

医療・高齢・地域福祉でソーシャルワーカーとして、対人援助職20年になります。現職は、地域包括支援センターで管理者をしています。
社会福祉士養成校等で、社会福祉士等の養成に関わって8年。
有資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、公認心理師。

地域包括支援センターの概要について

まず、基本情報として、全国の地域包括支援センターの設置状況や設置主体についてみてみましょう。

地域包括支援センターの設置状況

地域包括支援センター設置状況 厚生労働省資料

法人委託が約80%となっていますね。大きい市町村ほど委託が多いのが実態のようです。

このことから、社会福祉士の身分は8割が社会福祉法人や社会福祉協議会の職員と言えることができますね。私も法人職員ですので、この8割に含まっていますね。

全国に5351か所ですから、荒い計算で、人口約23,000人に1か所ある計算になります。

設置主体について

次に設置主体を見ていきましょう。

地域包括支援センターは、市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を配置して、住民の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、地域の住民を包括的に支援することを目的とする施設。(介護保険法第115条の46第1項)

となっています。

根拠法は介護保険法です。

配置義務について

65歳以上の高齢者(第一号被保険者)の人口によって、配置される人数は定められています。

専らセンターの行う業務に従事する職員として、一のセンターが担当する区域における第一号被保険者の数がおおむね3000人以上6000人未満ごとに置くべき員数は、保健師、社会福祉士及び主任介護支援専門員(これらに準ずる者を含む )それぞれ 。各1人とされている(施行規則第140条の52第1項第2号 )

例えば、あなたの住んでいるA町の人口が2万人で、高齢化率が25%としましょう。

A町には、5000人の高齢者がいることになります。

そうすると、A町の地域包括支援センターには、保健師1名、社会福祉士1名、主任介護支援専門員1名を配置しなさいとなっているのです。

人口規模で人員配置が定められているわけです。

地域包括支援センターの社会福祉士は、どんな仕事?

さて、いよいよ本題ですね。

社会福祉士として働く地域包括支援センター(以下包括)はどんな仕事なのでしょうか?

ここでは、包括の社会福祉士の有子(あるこ)さんに説明してもらいましょう。

有子さん
有子さん

社会福祉士の有子です。包括で働いて丸10年になります。

めざし
めざし

有子さん。

地域包括支援センターの社会福祉士の仕事について教えてください。

端的にいうと、ずばりどのような仕事なのでしょうか?

有子さん
有子さん

ありがとうございます。

そうですね。包括の社会福祉士は、

①困っている高齢者を強めていくのが得意です。エンパワメント屋さん!です。

②高齢領域のコミュニティソーシャルワークのプロ!です。

包括では、高齢者の意思や尊厳を尊重できる権利擁護の要です!

有子さんが、大切なポイントを3つ挙げてくれましたね。

  1. 困っている高齢者を強めていくのが得意。「エンパワメント」屋さん!
  2. 高齢領域の「コミュニティソーシャルワーク」のプロ!
  3. 高齢者の意思や尊厳を尊重できる「権利擁護」の要

有子さんがかかわっている事例

具体的に先ほどの3つのポイントについて、有子さんが関わった事例で説明したいと思います。


ここで登場するのは・・・、

正子さん
正子さん

地域に住んでいる正子(まさこ)といいます。年齢は84歳。

夫を早くに喪って、女手一人で息子を育ててきました。おしゃべりが好きです。

でも、最近こまったことがあって・・・。

役所に問い合わせたら、包括という相談窓口があるらしいわね。

電話して、家に来てもらえることになりました。

有子さん
有子さん

お邪魔します。地域包括支援センターの社会福祉士の有子です。

悩める正子さん
悩める正子さん

最近、物忘れがひどくなってきて、生活が不安でしかたありません。

社会福祉士の有子さんは、訪問面接を通じて、いろんな情報収集をします。

そこで、悩める正子さんの生活の課題を以下のように整理しました。

悩める正子さんの生活状況

  1. 物忘れが多くなってきており認知面に不安を感じている。病院は内科にかかっているが最近は受診できていない。
  2. 足をくじいてしまって以来、外出の機会が減って人と話さなくなった。
  3. 長男が一人いるが長年引きこもっている。遺産を長男へちゃんと託したいが、どうしたらよいかわからない。
有子さん
有子さん

正子さんの支援計画を考えて、提案してみました!!

支援計画

  1. 物忘れについては、内科の先生に相談をしてみましょう。かかりつけ医の判断で、今後の治療方針(内科で対応か、専門医紹介かなど)を決めていきましょう。
  2. 整形外科で問題なければ、地域サロンへの参加をしてみるのはどうですか?民生委員さんにお話をしますよ。
  3. 長男さんへの大切な思いを、しっかり遺言書に残していきましょう。

訪問中にこれを実践できる社会福祉士の有子さんはやはりベテランですね。

この提案を細かくみていきましょう。

高齢者を強めるのが得意。エンパワメント屋さん!

一つ目の物忘れへの支援についてみていきましょう。

  • 支援計画①
  • 物忘れについては、内科の先生に相談をしてみましょう。かかりつけ医の判断で、今後の治療方針(内科で対応か、専門医紹介かなど)を決めていきましょう。

正子さんは物忘れを自覚していますし、内科にはかかっている状況が確認できました。

これは大きな正子さんの強みですね。

認知症については、本人が無自覚なことも多くあります。病識があるということは、受診や治療に対しても協力的になります。個人としての強みになります。

最近受診できていないと言っても、これまでの治療経過を把握している主治医がいることは大きな環境としての強みになります。

生活の中で、困っていること、できていないことの実態把握から、本人のいろんな強みを活かすことが大切です。

「物忘れが多くなって不安」という正子さんの困っていることを軽減できる、具体的な方法を有子さんは提案しています。

このようなエンパワメントの視点を持って仕事をしているのが、ソーシャルワークの専門職である包括の社会福祉士なのです。

包括の実践については、この記事を参考にしてくださいね。

高齢領域の「コミュニティソーシャルワーク」のプロ!

二つ目の地域活動への参加をみていきましょう。

  • 支援計画②
  • 整形外科で問題なければ、地域サロンへの参加をしてみるのはどうですか?民生委員さんにお話をしますよ。

社会福祉士の有子さんは日ごろの地域づくり活動から、近隣での地域サロンなどについて、内容を把握しています。

自立支援を行う上で、介護サービスだけでなくこのようなサロンなどの有効な資源を活用できます。

正子さんは、息子と2人暮らし世帯なので、民生委員の一人暮らし高齢者のリストに入っていないことを推測した社会福祉士の有子さんは、民生委員との接点を生み出そうとしています。

高齢者を地域で支える援助を行っているのです。

正子さんが、社会的に孤立しないように、包摂されながら暮らせるように支援しています。

高齢者領域のコミュニティソーシャルワークのプロと言えるでしょう。

高齢者の意思や尊厳を尊重できる「権利擁護」の要!

最後の遺言への支援です。

  • 支援計画③
  • 長男さんへの大切な思いを、しっかり遺言書に残していきましょう。

8050問題に直面している世帯は、現場では多くあります。

正子さんの意思は「息子に遺産を残したい」というものです。

権利擁護というと、高齢者虐待防止や消費者被害防止のみと理解しがちですが、それだけではありません。

将来的に起こりえる生活課題の発生予防への支援になります。これも大切な権利擁護です。

遺言を残していくためには、さまざま方法がありますが、

  • たくさんの遺産があること
  • きっちり遺したい

という正子さんの思いを尊重して、公正証書での遺言書作成を司法書士へ依頼することになりました。

権利擁護を行うために、司法書士や弁護士をはじめ、さまざまな関係者と日ごろから連携を密に取れるのが包括の社会福祉士です。

このように、本人の意思を具体的に尊重でき得るのが包括の社会福祉士なのです。

地域包括支援センターの社会福祉士の業務の大変さ

めざし
めざし

大切な仕事をされていますね。

でも、その一方で大変さはないですか?

有子さん
有子さん

そうですね。やりがいはありますが、生活を支援するということは、難しい時もあります。

お一人暮らしで、お亡くなりになるときも時にはあります。

命の現場だと思います。

対人援助職として、続けるためには、しっかり準備が必要だと思います。

有子さんが言う、対人援助の準備についての一つは、この記事を参考にしてくださいね。

有子さん
有子さん

一人ではなかなか行き詰ってしまうので、そんな時は、チームアプローチです。

包括には心強い医療職の保健師さん、主任ケアマネジャーがいているので、その都度相談をしています。

有子さんの言うとおり、包括には3職種が基本的には在籍しています。

チームアプローチ(多職種連携)については、この記事を参考にしてくださいね。

平均給与

包括ということでは、資料がないので、生活相談員・支援相談員 を参考にしましょう。

355,150円となっていました。(介護従事者等の平均給与額の状況(月給・常勤の者、職種別))

令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要より抜粋

まとめ

地域包括支援センターの社会福祉士の仕事は、

  • 困っている高齢者のいろんな「強み」を捉えるエンパワメントが得意
  • 高齢領域の「コミュニティソーシャルワーク」のプロフェッショナル!
  • 地域包括支援センターにおける高齢者の意思や尊厳を尊重できる権利擁護」の要

ここでは、このようにまとめることができます。

有子さん
有子さん

みなさんの参考になればと思います。ありがとうございました。