介護に従事されている方や福祉業界の方、ソーシャルワークを頑張っておられる方にとって、おすすめのマンガをここでは紹介していきたいと思います!
記事の信頼性
医療・高齢・地域福祉でソーシャルワーカーとして、対人援助職20年以上。現職は、地域福祉機関で管理者をしています。
社会福祉士養成校等で、社会福祉士等の養成に関わって約10年。
有資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、公認心理師。ブログ月間1万PV。
そんな私が、自信(独断と偏見)をもって、おすすめのマンガをここで、随時紹介したいと思います。
医療マンガ
Shrink~精神科医ヨワイ~ (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
とある研修会に参加させてもらったその後の交流会で「ああいう精神科医がいたらね!」というソーシャルワーカーたちの話題になっているのを聴いて、手にしたマンガです。
地域福祉の現場では、「精神科」と聞くと未だに差別的な捉え方をしている当事者とよく出会います。
風邪もこじらすと肺炎の可能性があるように、うつもアルコールもこじらせば、命の危険性がある。
なので一現任者としては「内科や外科にかかるように精神科も当たり前にかかる世の中になって欲しいなぁ。」そんな願いを叶えてくれるマンガでした。
主人公ヨワイ医師が患者と向き合います。
現場視点でこのマンガをみると、患者さんとの向き合い方をヨワイ医師が教えてくれます。彼が話す一つ一つが臨床でも使えそうなものばかりでした。
「今治療している病気のせいです」
「逃げることです」
登場人物はクリニック勤務の看護師・精神保健福祉士、保健所勤務の保健師、医療機関の臨床心理士などたくさん出てきますので、コメディカルの方にもお勧めですね!
「精神科の看護師ならまず 耳を澄まして 目を凝らして見つけるんです 患者の声を本当の姿を」
「今必要なのは、社会資源を使うことです」
ソーシャルワーカーとしては、精神保健福祉士が特に取り上げられているのは7巻。PSW→MHSWへの視点も描かれていました。クリニックに勤務する精神科医ヨワイ医師が、患者と向き合あってシュリンク(妄想を小さくしていく)していく物語。とてもお勧めです。
ビターエンドロール(アフタヌーンKC)
医療ソーシャルワーカー(MSW)を取り上げたマンガはこれまでいくつかあったけど、このビターエンドロールは、かなり「ソーシャルワーカー」の本質をついてると思う。作者の佐倉先生は相当「対人援助」なるものをご自身で学ばれたのではないかと思います。
先日、佐倉先生とお話しする機会(オンラインにて)がありました!!とても楽しい時間でした。お忙しいのに佐倉先生ありがとうございました。その中で先生は、
「ソーシャルワーカーの方たちは、人権についてよく勉強されている職種なんだと思いました。」
とおっしゃっていました。参加した他のSWからは、「これまで私たちはあまりそういった指摘を(多職種から)受けたことがないね・・・。」と素直に驚いて反応しました。
なんだか私たちの本質をえぐられた気がして、うれしかったし、私はとても感動しました。
【当事者を信じること】本編の主人公であるMSW犬飼の信念。劇中何度もそのシーンがあるので、現任者として、時々信じられなくなる自分自身を「やっぱりそうだよな」と奮い立たせてくれます。
現任者は日々、業務に忙殺されますが、犬飼のように一人一人の当事者とこんな風に向き合えたらなあと、憧れます。
患者が語る様々なエピソードは、現任者からしても生々しいものばかり・・・。生きてきたこれまでの人生や今の現状を、主人公犬飼は、ソーシャルワーカーとして受け止めていきます。そのプロセスは、これからソーシャルワークを学ぶ学生にとっても、とても分かりやすいでしょう。
また現在の社会問題がちゃんと描かれているし、それらに介入するMSWの大切な視点も同時に触れられているので、大変読みやすい事例集のようです。
現任医療ソーシャルワーカーも、学生も必読と思います!惜しまれながらの3巻堂々完結!
介護マンガ
さくらと介護とオニオカメ! (コミックELMO) 1巻~5巻
介護リーダーの熊本さくらと、新任の鬼岡明とが織りなすヒューマンドラマです。
作品舞台は「老人保健施設」になっています。
利用者ファーストになりたいけど、現実の難しさがある。
そんな施設介護職員としてのいろんな葛藤や悩みも描かれているし、現任者にとっては「わかるなあ」と、たくさん頷けるシーンがあります。
主人公の一人、熊本の徹底した当事者目線や、彼女との出会いによって、介護士として大きく成長していく鬼岡やスタッフたち。
この軌跡を丁寧に描いた本作品によって、そのプロセスを読者が追体験(経験者は追憶でしょうか・・・。)することで、介護士としての悩みや葛藤を共有して、分かち合うことできて、共通認識を持つことができる。これって、ナラティブや地域ケア会議と同じ効果があるなあと私は感じました。
地域ケア会議では、参加者同士、自立支援等についてのいろんな意見が繰り広げられますし、ナラティブは支援者(この場合は筆者)語り直しで、そのプロセスを通じて、参加者全員の自立支援や支援の在り方に対する共通認識を高めたり、新たな支援の気づきを得ることができています。
今の時代、施設介護のかかわる(これからの人にも)多くの人たちに、熊本と鬼岡のプロセスを共有してもらって、介護の素晴らしさや難しさを分かち合えたらいいなぁと思います。
大変おすすめの介護マンガです!
2022年11月10日、堂々完結の5巻発刊中です。ラストページまでたどり着くと・・・、物語のナラティブ(語り直し)をあなたは体験することになる!!
ヘルプマン! (イブニングコミックス)
これをやっぱり紹介しないといけませんね!!
第1巻の発刊は、2004年になりますので、ちょうど今から18年前になります。もう、そんなになるんだという感じです。
介護保険制度が2000年から開始されたので、この「ヘルプマン」と共に歴史をたどってきました。ちょうど私のキャリアと同じぐらいなので、一緒に成長してきた気が勝手にしています💦
登場人物として「百太郎(ももたろう)」と「仁(じん)」という若い男性が出てきます。
当初は2人とも介護スタッフでした。やがて仁は、介護支援専門員になります。いわゆるソーシャルワーカーとしての役割です。
百太郎は(介護福祉士を受けては・・・残念な結果⁈な)現場の介護員です。そんな福祉業界の2人の若者が、痛快に活躍する介護マンガです。
仁は冷静沈着で合理的。知識も豊富で大人な人物。百太郎は直感で勝負といった感覚で動く人間で、その感受性は素晴らしいです。
そんな凸凹コンビが衝突をしながら、目の前の高齢者を元気にしていきます。ストーリーは介護問題なので、重たくて長い生活課題を取り上げますので、沈痛なシーンが続きます。ですが、物語の終盤に、百太郎と仁が力を合わせて、痛快に解決していってくれます!
二人とも現場の人間なので、悩みながら泥臭く・・・。最後には、見せ場があるので毎回感動します!いわば、困った人たちを助けに現れるスーパーマン=ヘルプマンですね。
現実には、なかなか解決は難しい問題でも、スーパーマン的に解決してくれているのが現任者としてはうれしいですね!!
(現在は、書籍は廃版になっており、電子媒体で購入が可能です。)
ヘルプマン! (イブニングコミックス) 1巻~4巻と「高齢者虐待防止法」
ヘルプマン!も制度と共にあるので、少しそういった点から見てみたいと思います。1巻から3巻と4巻の途中までは「高齢者虐待」についての問題がずっとテーマとして取り上げられています。ヘルプマン!(1~4)が刊行されたのは、2004年(平成16年)から2005年の間です。その後、2006年(平成18年)4月から「高齢者虐待防止法」が施行されています。ヘルプマン!(1~4)は、高齢者虐待防止法が成立する前の物語なんですね!
高齢者虐待の定義について
この法律は、高齢者虐待を2つに分けて定義しています。
それは、①養護者による高齢者虐待と、②養介護施設従事者等による高齢者虐待です。
①の養護者とは家族、親族、同居人等です。ヘルプマン!にはたくさんの介護する家族が出てきます。
②施設従事者は、老人福祉法及び介護保険法に規定する「養介護施設」又は「養介護事業」の業務に従事する職員です。百太郎や仁のような介護従事者のことですね。
犯罪白書によれば、
養護者による高齢者虐待の相談・通報件数については,高齢者虐待防止法が施行された平成18年度以降,途中24年度に減少したものの,増加傾向にあり,28年度は2万7,940件と,18年度の約1.5倍であった。同虐待判断件数についても,ほぼ同様の状況にあり,28年度は1万6,384件と,18年度の約1.3倍であった。
と報告しています。
このようにヘルプマン!(1~4)は、現在も減ることのない「高齢者虐待」について取り上げています。
そんな難しい課題の中、どのように百太郎と仁が活躍するのか。
「いい思いできねェなら生きてる甲斐がない!!」
「ご家族さんは頑張りすぎちゃダメっす!」
作中には、主人公たちが放つ「感動の名言」がたくさんあります!是非、読み進めてください!
ヘルプマン! (イブニングコミックス) 5巻~7巻と「介護支援専門員」
ヘルプマン!の5巻から7巻は、主人公の一人、仁がメインの「介護支援専門員編」になります。
介護保険制度(2000年)とともに介護支援専門員(ケアマネジャー)が登場しました。出来立てほやほやのこのケアマネジャーのことを取り上げています。
ケアマネジャーについては以下の記事を参考にしてください。
5巻から7巻の発刊は、2006年から2007年なので、この時のケアマネジャーたちは、6年か7年しか経っていない時期でした。
作中では、当初の制度的な欠陥も抉り出しています。問題となって取り上げられている「利益誘導」も、20年前は、当たり前のように行われていたように思い出します。
私は、20年前は病院勤務でしたが、当時ケアミックス(急性期病棟と療養病棟の混合で中小病院の多くがこの形態をとっていた)の医療ソーシャルワーカー(といっても名ばかりだった)への期待は稼働率だったし、患者の獲得を言われてました。
行政サービスとして、ケアマネジメントが位置づけられていないということもあり、サービス利用を調整するケアマネジャーは、常々、
『利用者の選択や自己決定といった原則と、法人職員としての役割期待とのせめぎあい』
は一定、今も続いているのではないのかなと思います。
しかし、このヘルプマン!「介護支援専門員編」の時代から振り返れば、ケアマネジャーたちの努力によって、少しは“まし”にはなっているのかも知れません。・・・“まし”と表現したのは、まだまだ制度的な問題点がたくさんあるからなのですが・・・。
さて、肝心のマンガの紹介ですが、経験を通じて、何が大切なのか確信した仁は本当にカッコいいです。この3巻を通じて仁が行っている援助は、ケースワーク(ケアマネジメント)だけでなく、利用者の環境へのアプローチを行っていて、ソーシャルワークそのものと思います。
現在のケアマネジメントは、計画にインフォーマルサービスをどのように位置づけるのかが非常に重要視されているので、そのヒントがたくさん見ることができます。
「利用者不在!」
「これが生活のニーズなんです」
心を打つ仁のセリフが胸に響きます。20年近く経とうとしている今読み返しても、変わることはなかったです。大変お勧めの3巻になります!!