この記事のまとめ
ソーシャルワーカーに必要な能力として挙げられているプレゼンテーションの技術について、一現任者として、ここでは考えていきたいと思います。

プレゼンテーションと言われても、ビジネス用語では聞くことはあるけど。
「ソーシャルワーカー」にとって、と言われると、よくわからないなぁ。
ここでは、現任者にとって、プレゼンテーションはなぜ必要な技術なのかを考えていきたいと思います。
記事の信頼性
医療・高齢・地域福祉でソーシャルワーカーとして、対人援助職20年以上。現職は、地域福祉機関で管理者をしています。
社会福祉士養成校等で、社会福祉士等の養成に関わって約10年。
有資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、公認心理師。ブログ月間1万PV。
ソーシャルワーカーのプレゼンテーション
まず、ソーシャルワーカーにとってのプレゼンテーションを理解するために、社会福祉士の新カリキュラム 「ソーシャルワークの理論と方法 」をみていきましょう
ソーシャルワークの理論と方法(専門)(60)目標
①社会福祉士として多様化・複雑化する課題に対応するため、より実践的かつ効果的なソーシャルワークの様々な理論と方法を理解する。
引用:社会福祉士養成課程のカリキュラム(案) 厚生労働省
②支援を必要とする人との援助関係の形成やニーズの掘り起こしを行うための、知識と技術について理解する。
③社会資源の活用の意義を踏まえ、地域における社会資源の開発やソーシャルアクションについて理解する。
④個別の事例の具体的な解決策及び事例の共通性や一般性を見出すための、事例分析の意義や方法を理解する。
このように新しくカリキュラムが見直されたのですが、その教育に含むべき事項(内容)として、
④ソーシャルワークに関連する方法
1ネゴシエーション ・ネゴシエーションの意義、目的、方法、留意点
2ファシリテーション・ファシリテーションの意義、目的、方法、留意点
3プレゼンテーション・プレゼンテーションの意義、目的、方法、留意点
「援助関係の形成」や「ニーズの掘り起こし」等を行うための具体的な技術として、プレゼンテーションがしっかりと位置付けられています。
主任介護支援専門員にとってのプレゼンテーション
参考として例えば、隣接する対人援助職であります主任介護支援専門員にとってのプレゼンテーションの技術はどのように必要なのでしょう。
一つ目は、「言語化する力」です。これはケアマネジメントを実践する中で見えてきた地域の課題を明らかにし、他機関・多職種に伝えていくために必要な能力、もしくは自身のケアマネジメント実践を言語化し介護支援専門員に伝えていく能力になります。
出典引用:介護支援専門員研修テキスト 主任介護支援専門員研修(一般社団法人日本介護支援専門員協会)
主任介護支援専門員は、10年以上の実践経験があるソーシャルワーク機能を果たす専門職と言えます。
日々の実践を通じて「地域課題」にも精通しています。既存のサービスで対応できないクライエントの生活の困りごとは何かについても捉えているでしょう。
現任者の中には「ちょっと言葉では説明できないかも」と思われるかもしれませんが、感覚的には必ず捉えていると思います。
主任介護支援専門員は、それをしっかり「言語化しなさい」と研修で教育されてます。

これからのソーシャルワーカーに問われているのは、
実態把握したことを対象に理解できるように説明して、
納得してもらえる能力があるかどうかです。
プレゼンテーションの例
プレゼンテーションの例をいくつか挙げてみたいと思います。例えば・・・、
クライエントの能力にそった情報提供
ケースワークにおいては、目の前のクライエントの能力にそった情報提供ができているかどうか。これは例えば、認知症高齢者に対して、介護保険制度の説明を混乱してしまうぐらいたくさんの情報提供をせず、理解できるように説明しているかどうか。
介護保険申請一つとってみても、段取りは複雑です。まず、申請書に必要項目を記入します。めざしの市町村の例ですが、必要項目も主治医のフルネームだったり、診療科だったり、認定調査の同席もどうするのか決めないといけません。それから、認定調査を受ける。調査を受ける際には、客観的にちゃんと状況を調査員へ伝えられるのかどうかも大きなポイントになります。
ですので、ソーシャルワーカーの情報提供は行ったら終わりではありません。ちゃんとクライエントが理解しているかどうかがとても大切になります。
例えば、現場でよく見かける例としては、
クライエントがなかなか理解されていない場合、説明したソーシャルワーカーが「ちゃんと説明しましたよ」と言っていることをよく聞くことがあります。
それでは、対人援助職としてはダメなわけです。
それぞれの聞き手に合わせて正確にまたは理論的に伝えることができないと紹介するサービスや提案も正当には理解できない。(ソーシャルワーク理論と方法より抜粋)
ソーシャルワーカーにとってのプレゼンテーションはクライエントが「ちゃんと理解している」ということが大切ですね。
ソーシャルワーカーは、クライエントの能力をアセスメントするので、その能力に沿ったプレゼンテーションを心掛けたいものです。
整然と地域課題を伝えられる
委託の地域包括支援センターや障害基幹相談支援センターであれば、委託元の行政や地域に向けて、整然と必要な地域課題を伝えることができるかどうか。
地域共生社会を目指すために、地域生活課題を把握することが大切となってきています。
日ごろのケースワークやケアマネジメント、地域ケア会議等を通じて、把握された「地域生活課題」について、行政や地域住民に向けてに整然と伝えることがとても重要になります。
プレゼンテーションのタイプが紹介されているので、引用します。
紹介型 | 新しいサービスや品を紹介し納得してもらうプレゼンテーション |
提案型 | 現状の問題点を踏まえて聞き手に新しい行動やプランを提示するプレゼンテーション |
どちらも大切な要素を含んでいますが、行政等には「提案型」のプレゼンテーションを活用することがより推奨されます。
私たちが実態把握した「地域生活課題」は、市町村の政策として行う必要があるのか。
また、地域住民にとって、私たちの提案がその生活における問題の緩和や解決になるのか有効性を認めてもらわなければなりません。
そのためには、現状分析▶課題抽出▶問題の共有(ここが肝でしょう)▶承認 といったプロセスを踏まえることが重要と思います。
解決していく道筋をつける
相談支援専門員や介護支援専門員などケアマネジメントに従事している職種であれば、例えば医師にクライエントの課題を伝えて、解決していく道筋をつけられるかどうか。
例えば、当事者の医師診察同席の場面がありますが、その場面で当事者の「生活課題」を医師に伝えることが大変重要です。
その際にロジックを整理しておくことが大切になります。
縦の論理 | 因果関係が理解できる。「こうだから、こう」と万人が納得する状態。 |
横につながった論理 | 漏れがないか、誰が見ても全体をカバーしている。漏れもダブりがなく万人に理解される状態。 |
誰もが納得する道筋をつけていくこと。
例えば、内科の先生に、「認知症の検査をお願いします。」とだけ言っても、これではロジックが成り立っていません。
認知症が進行して、生活に支障をきたしている(縦の論理)。月一で訪問している家族も認知症の進行を予防したいと希望している。支援しているヘルパーからも食品を腐らせたり、以前になかった認知機能の低下があると聞いている(横の論理)
といったことが例示できます。

ソーシャルワーカーは、生活支援を行う上で、
社会制度の把握や精通しますが、
それで終わってはダメだということです。
利用者や当事者はもちろんですが、場合によっては当事者の環境、例で挙げたように、環境は行政や多機関なのかもしれません。
これらに具体に働きかけるのがソーシャルワーカーの任務です。
ソーシャルワークグローバル定義から
ここでは、ソーシャルワークのグローバル定義の一部ですが、引用します。
プレゼンテーションがなぜ大切なのかを理解する上で、この定義のこの部分をもう一度読み直してみると、私はすとんと腑に落ちました。
ソーシャルワーク専門職のグローバル定義(一部抜粋)
ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。
引用出典:日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)ホームページより
ソーシャルワーカーは、社会制度に精通するからこそ、いろんな構造に疑問も生まれるし、そういったことに気づける。
そして、具体に働きかけるのが私たちですから、そのために「伝え切る」手法としてプレゼンテーションの技術は不可欠になるのです。
でも、一足飛びにはいきません。
これは技術ですから、初めからできればいいですが、たいていは習得に時間もかかるでしょう。
ソーシャルワーカーは、技術職なのだと気づきます。
現任者も、プレゼンテーションの技術がなぜ必要なのかということを、まずは理解する必要があります。
日々研鑽をつんで、プレゼンテーションの技術を磨いていきましょうね!
このサイトで引用している新カリキュラムのテキストを紹介しておきます。
読んでいただいてありがとうございました。
以下は、その他の技術についても解説しています。ご参照ください。
めざし