地域福祉のエンパワメントについて(個別地域ケア会議の実践事例)

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地域福祉を「エンパワメントする」って大切と聞くけど、よく意味がよくわからないわ。

そんな疑問に、ここではお答えしたいと思います。

近頃、「エンパワメント」とよく聞くようになりましたね。

でも、横文字だし、「強める」とかいう意味はわかるけど、実践の方法はどうしたらよいのでしょうか。

ここでは、実際の個別地域ケア会議を含めて、解説していきます。

記事の信頼性

医療・高齢・地域福祉でソーシャルワーカーとして、対人援助職20年になります。現職は、地域福祉機関で管理者をしています。
社会福祉士養成校等で、社会福祉士等の養成に関わって8年。
有資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、公認心理師。

記事の内容

  • 【導 入】地域の事例 ごみ問題から見る地域の強みとは
  • 【基本①】個別地域ケア会議の実際
  • 【基本②】エンパワメントとは
  • 【発 展】効果的なアプローチ方法は何か
  • 【結 論】地域福祉のエンパワメントに必要な視点

筆者のかかわった具体的な事例をもとに、ソーシャルワーカーに必要な地域福祉のエンパワメントの視点を解説していきたいと思います。


地域の事例 地域あるある「ごみ問題」

地域包括支援センターにて地域の問題として、かかわることが多い事例が「ごみ問題」です。

きっかけは、ほとんどが地域住民から「困っている」という訴えから始まります。

民生委員
民生委員

近所の方から相談がありました。

Aさんは、ごみを違う日に出してしまって、何回言ってもダメで。

ほんとにお隣さんが困っているみたいで。何かいい方法ないでしょうか?

経過について

  • 地域の民生委員さんから、地域包括支援センター(以下包括)へ相談が入ります。
  • 高齢者Aさんが、ごみ収集とは違う曜日にごみを出してしまっていました。
  • もちろん市町村は回収してくれません。
  • 結果、放置されてカラスが来て、ごみが散乱!近所の方々は困っていました。
  • 住民の気持ちとしたら、「お年寄りだから、今までごみは片づけたりやってきたけど・・・。これ以上は。遠方の家族は何をしているんだ」とおっしゃっていました。

地域住民は、これまでに相当、高齢者Aさんへ生活支援を行っていました。

包括は、いろいろな経過のにかかわり始めることが、実態なのです。

地域住民の見えない「互助」について

高齢者の地域での問題は、すぐさま表面化しません。

その原因の一つとして、この事例のような「地域住民の互助力」があることです。

この互助とはなんでしょうか?地域福祉を理解する上で、大変重要になるキーワードです。

厚生労働省より抜粋
自助・⾃分のことを⾃分で⾏う
・セルフマネジメント
・市場サービスの購入
・自身や家族による対応
互助・ボランティアなどの⽀援
・地域住⺠の取組み
共助・介護保険・医療保険制度
公助・市町村等が提供する福祉等サービス
・生活保護
厚生労働省から筆者まとめ

厚生労働省が例示している互助については、上記のようなボランティアとか、住民の取り組みなど行政として捉えやすい形となって現れたものが挙げられています。

現任者として、感じているのは、そういった形となって捉えていない互助が地域に存在し、高齢者の生活を下支えしていることです。

ごみ問題の事例を取ってみても、地域住民は「お年寄りだから、今までごみは片づけたりやってきた」とおっしゃっています。

ボランティアとして登録しているわけでもない、地域の取り組みとしても特に認識されていない「互助」になりますね。

個別地域ケア会議について大切なこと

そして、自治会長を含めて、民生委員、近所の方々と家族と包括にて会議を開催することになりました。

いわゆるこれが、個別地域ケア会議になります。

会議では、さまざまなことについて話し合われました。

個別地域ケア会議の機能について

厚生労働省より

地域ケア会議にはいろんな機能があります。

なかなか捉えずらい部分もありますので、この事例に沿って、触れていきましょう。

個人の対する支援の充実

まず、個人に対する支援の充実です。

これが大変重要で、全体的な福祉の向上というところから出発するのではなく、高齢者個人から始まるということです。

個人とは、ここではごみ問題を抱えた高齢者自身であり、当事者への支援の充実を検討し実施していくことが大切になります。

ですので、ソーシャルワーカーとしては、ケースワークやケアマネジメントをとして地域ケア会議を進めていくことになるのです。

実務者にとって大切なこと

いろんな個別地域ケア会議を経験してきて、大切と感じていることを以下にまとめます。

  1. 相互理解
  2. 当事者理解
  3. 役割分担
  4. 合意形成

Aさんと地域住民はこの場合、衝突しています。疑問が疑問を呼んで、「家族が何もしてない」など実態が分からないから、住民は「いい加減にしてほしい」となっていきます。

お互いの疑問点をまずは、話し合う

いわゆる“うっぷん”がたまっているので、ガス抜きが必要なわけです。

不満に思っている地域住民と、支えきれない家族の状況をまずは相互理解することが必要です。

家族にはかなりの覚悟をもって話し合いに挑んでもらわないといけません。援助者はサポーティブに家族の傍にいることが大切です。

当事者理解

その後に、当事者理解です。

認知症の診断を受けており、短期記憶が大きく低下している。Aさんの身体的・心理的・社会的な状況を住民に理解してもらいます。

ここでは、援助職が住民に丁寧に説明するのが良いでしょう。

個人情報に配慮して、当事者理解をしてもらうための説明は、たいへんに難しいです。

認知症であれば、病気によって、短期記憶の低下や遂行機能障害によって、どのようなことが生活上で難しくなっているのかを、住民にわかりやすく説明する必要があります。

プレゼンテーションについては以下の記事を参考にしてくださいね。

うっぷんがたまっている状況で、当事者理解は難しいでしょう。まず、受け入れてもらうだけの心の間の確保が重要なのだと思います。

役割分担と合意形成

当事者理解がある程度できたら、役割分担合意形成です。

具体的に、ごみについてどういう対策を行っていくのか、話し合います。

  • ごみ当番は本人は難しいので、近隣でサポートする。
  • 間違って出すのを防ぐために、家の中にごみを捨てられるようにし、張り紙などを置いて、本人に注意喚起する。
  • ビン缶については、家族が対応する。

最後に、合意形成の時間が必要です。

役割分担等合意形成まで丁寧に行うことで、高齢者に関わる地域支援のネットワークが構築されていきます。

エンパワメントとは

ここでは、エンパワメントについて触れていきたいと思います。

厚生労働省のソーシャルワークへの期待についての中で、住民主体の地域課題解決体制をつくるために求められるソーシャルワークの機能として、以下の項目を挙げています。

  • ソーシャルワーカー自身が地域社会の一員であるということの意識化と実践化
  • 地域特性、社会資源、地域住民の意識等の把握
  • 個人、世帯、地域の福祉課題に対する関心や問題意識の醸成、理解の促進、福祉課題の普遍化
  • 地域住民が支え手と受け手に分かれることなく役割を担うという意識の醸成と機会の創出
  • 地域住民のエンパワメント(住民が自身の強みや力に気付き、発揮することへの支援)
  • 住民主体の地域課題解決体制の立ち上げ支援並びに立ち上げ後の運営等の助言・支援
  • 住民主体の地域課題解決体制を構成するメンバーとなる住民や団体等の間の連絡・調整
  • 地域住民や地域の公私の社会資源との関係形成
  • 見守りの仕組みや新たな社会資源をつくるための提案
  • 「包括的な相談支援体制」と「住民主体の地域課題解決体制」との関係性や役割等に関する理解の促進

全て大切でしょうけれども、ここで特に注目したいのは、赤線を引いた箇所です。

地域住民をエンパワメントしていくということは、

「住民が自らの強みや力に気づくこと」▶「力を発揮する」ことが重要と記されています。

Aさんをはじめ、会議に参集した地域住民の強みは何でしょうか。

そのことを考えていきたいと思います。

エンパワメントアプローチ

エンパワメントアプローチとは、

たとえば地域住民(のなかの福祉に関心の高い人)、民生・児童委員などの準専門職、研究者という文字どおりの第三者がいろいろな実践活動を行うことによって、利用者や専門家がニーズに気づくことなどを意味している。

引用:地域福祉と包括的支援体制 中央法規

分かりやすく解説するために、Aさんの事例を振り返ってみましょう。

散乱したごみはどうなったいるかというと、隣近所住民が片付けていました

ここで地域福祉をエンパワメントする際に、ソーシャルワーカーが注意しなければならない重要なポイントを提示します。

重要ポイント:認知症のAさんをサポートしてくれている隣近所の方々がおられるはずなのに、ソーシャルワーカーがこの互助の力をほとんど知らない。

ですので、厚生労働省の文面に付け加えたいものとして、

「ソーシャルワーカーが互助の力を感知する」▶「住民が自らの強みや力に気づく(促す)」▶「力を発揮する」

地域福祉のエンパワメントに必要な視点とは

国は「暮らしにおける人と人とのつながりが弱まる中、これを再構築する」と地域共生社会をうたっています。

しかし、現場で見るのは、高齢に伴う困難に直面した場合、誰が役割を持ってお互いに配慮しているという現実です

この実態を、地域福祉にかかわるソーシャルワーカーが、まず感知し捉え、認知していくことが大切です。

ケースワークやケアマネジメントでは、「本人の強みは何か?」をアセスメントしていると思います。

同様に、地域住民の強みは何か?をまず捉える必要があります。

そして対話を通じて、住民がその強みに気づいてもらうよう働きかけ発揮してもらうのがエンパワメントと考えます。

地域にはすでに素晴らしい支え合いがあるのです。

ソーシャルワーカーがそれを捉えることが重要なのです

めざし

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