介護予防・日常生活支援総合事業の充実に向けた検討会 ~令和6年度からのフルモデルチェンジ~

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コラム
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記事の信頼性

医療・高齢・地域福祉でソーシャルワーカーとして、対人援助職20年以上。現職は、地域福祉機関で管理者をしています。
社会福祉士養成校等で、社会福祉士等の養成に関わって約10年。
有資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、公認心理師。ブログ月間1万PV。

介護予防・日常生活支援総合事業の充実に向けた検討会における議論の中間整理が先日、提示されたので、ここではそれを取り上げたいと思う。
介護予防・日常生活支援総合事業の充実に向けた検討会にていわゆる「総合事業」の検討がなされていました。2023年4月10日に第一回目があり、11月まで5回の会議が開催されています。
介護報酬改定などは、よくjointなどで記事になるので目にすることが多いけど、「総合事業」という高齢者全体からしたら対象が限られるし、言ってしまえばマイナーな部分なので、あまり表に出ることはないのかな💦

介護予防・日常生活支援総合事業について

初めに、介護予防・日常生活支援総合事業(以下総合事業)について少しおさらいしておきましょう。
総合事業は平成29年4月から全国で始まりました。

簡単に説明すれば、総合事業は、地域包括ケアシステムの構築の一端を担う「生活支援と介護予防」を強めるためのものです。

以下は基本的な考え方から抜粋

市町村でカスタマイズできるので、上の図にあるように地域住民主体の特に「互助」力を高める取り組みを目指して、それぞれの実情に応じて進められてきた経過があります。

  • 生活支援を必要とする高齢者がとても増えるので、買い物や掃除の支援、生きがい参加が今まで以上に必要になる。だから、ヘルパーやデイだけではなくって、住民がやってる取組も含めてみんなで支える体制を、地域の中に作っていこうね。
  • 役割を担うことは介護予防にもつながるので、地域の誰もが参加できる、身近な場所での「体操教室」や「サロン」の立ち上げを応援しよう。

そういった流れでずっとやってきた経過があります。
でも、どうも多様な主体による多様なサービスの普及はすすんでない・・・。ということで、今回の検討会が開かれています。

介護予防・日常生活支援総合事業の充実に向けた検討会

招集された構成員たちの発言は、さすが現場に近いところからという印象を受けました。
関西圏からも多数招集されていたから、私個人としては、研修会のグループワークなどで直接お話をしたこともある方々になるので、親近感を勝手に感じています。
例えば、以下の発言。

行政なので、異動は必ずあると思うのですが、そういった理念は引き継がれていない。何でやっているのか、よく分からないのだという声が各地から聞こえております。~中略~
都道府県や国、自治体が介護事業所の顔色をうかがわなくていい、もっと思う存分に住民主体のサービスを創設し、また、それを創設しているのであれば、それを思う存分に使えるように、まず、住民たちに活躍していただくことがいいことなのだということをもっと大きく発信していただけないと

平成29年4月から開始された総合事業ですが、開始から数年経過する中で、大きな見直しは行われてなかったから、市町村行政の中で、指摘の問題はあるのだと思う。
診療報酬や介護報酬のように、定期的に見直されるシステムでもないから、カンフル剤の注入も国から無かったわけで、『前段からの取り組みを過不足なく進めることを常とする』行政システム(これはこれでいいし、得意と言っていい)としては、市町村に強いリーダーシップがあるのかないのかで、その力の入れ具合は変わってしまう。
市町村で自由にやっていいと言われても、どうしたら良いかわからなくなる・・・。大抵の実態としては停滞ぎみだといっていいと思う。

新旧の比較(中間報告について)

そして、中間報告の内容は、総合事業に関わっている一現場の人間としては、かなり衝撃的なというか、大変驚いたわけです。これはいい意味で・・・。。

総合事業は、多様な主体との協働は示されてはいたものの、先ほど触れた住民の「互助」力をどれだけ高めるかが焦点でした。

例えば、生活支援・介護予防サービスの提供を進めていくために「介護支援ボランティアポイント等を組み込んだ地域の自助・互助の好取組を全国展開」といったようなものが推奨されていました。
住民の「互助力」をできるだけ高めるような働きかけを市町村が今後やっていこうという流れがあって、私も繰り返して総合事業について、何度も地域のコミュニティや住民に対して、そして圏域のサービス事業所の専門職向けにも説明してきました。

ところが、今回の「中間報告書」を見る限り、そういった互助」や「ボランティア」という言葉がほとんど見受けられません。文言として、有償ボランティアという言葉と互助という言葉がなんと1か所のみ
前述の「基本的な考え方」では、何十か所も互助やボランティアという言葉は、多数見受けられていたので、大きく方向性が変化していることが分かります。

中間報告内容

ボランティアを主体とした取り組みを進めたけれども、結果として介護保険サービス事業者が主体となっている現状が確認されたということですから、総合事業が立ち上がった時には、目標にはしていたけれど、事業主体は多様化しなかったという反省が見て取れます。

だからこそ、以下のように総合事業を担ってくれる事業主体が、採算がとれて継続ができるようなデザインが大切だよと結論付けた。

2.地域の多様な主体が自己の活動の一環として総合事業に取り組みやすくなるための方策の拡充
(市町村がアレンジできるよう多様なサービスモデルを提示)
○ 総合事業は、利用対象者が要支援者・事業対象者・継続利用要介護者に限定されるため事業規模が小さく、採算性や事業の継続性の観点から、地域の産業などに関連する多様な主体や他分野の活動が総合事業に参入することが困難と考えられる。
○ 市町村は、地域の多様な主体が、自己の本来的な活動と総合事業とを一体として採算性運営の継続性等を確保することのできる事業をデザインするなど戦略的な対応が必要である。

・・・そらそうだろうと、至極当たり前な結論になっていました。なので、構成員のみなさんは、より現場の意見を吸い上げて、この検討会で伝えてくれた結果なのだと思います。

住民主体という観点からは、どうしてもランニングコストを行政が負担することについては、消極的だった判断があるでしょう。でも、令和6年度以降継続性に焦点をあてて、事業としての採算がとれるもにしていく方針は本当に必要だろうと思います。
何かやろうと思ったら、どうしてもコストがかかるもの!です!!

多様な主体を含めた地域の力を組み合わせるガイドライン令和6年3月には示されるようなので、このあたり注視が必要ですね。

最後に

報告書の最後には、大切な指摘がありましたのでこれを最後に抜粋したいと思います。

~中略~
この中間整理は、これまでの市町村の総合事業の取組を活かしつつも、大きな発想の転換によるフルモデルチェンジを促すものとなっている。

とあるように、総合事業に関わるものは、相当な転換に迫られるのだと思います。

介護予防ケアマネジメントについても気になるので、またの機会に・・・!
読んでいただいてありがとうございました。

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