憧れのソーシャルワーカーとして今働いているけど、仕事が辛すぎます。
ここでは、こんな思いを少しでも解消できるように、筆者がたどり着いた心の整理の仕方を紹介していきます。
記事の内容について
- 【導入】ソーシャルワークの特徴
- 【基本】転移・逆転移の理解
- 【発展】逆転移を否定しないこと
- 【結論】つらいを解消する整理の仕方
記事の信頼性について
医療・高齢・地域福祉でソーシャルワーカーとして、対人援助職20年になります。現職は、地域福祉機関で管理者をしています。
社会福祉士養成校等で、社会福祉士等の養成に関わって8年。
有資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、公認心理師。
私も、幾度となく「ソーシャルワーカーとして辛い思い」をしてきました。
例えば、
- 自分の力量のなさで、すごい無力感がある
- こんな自分がソーシャルワーカーとしての役割が担えるのかと自信がなくなった
- ソーシャルワーカーとして役に立たない
- 自分は向いていないんじゃないか
などなどです。
でも、こうして今20年続けることができています。
どうやって続けてこれたのか、そのポイントをみなさんにお伝えできればと思っています。
ここでの結論は、どんな自分の人生も「クライエントに役立てる」ことができるとしています。
ソーシャルワーカーが“つらい”を解消していくために
ソーシャルワークの特徴
ソーシャルワークは、人々が生活していく上での問題を解決なり緩和することで、質の高い生活(QOL)を支援することです。
ソーシャルワーカーは、相談援助を通じて生活を支援します。当事者にとっての生活は続けていけば、「人生」になります。
ですので、人生の一端を支えるのがソーシャルワーカーの仕事です。
- お金がなくて生活が成り立たない。
- 子育てに悩んで仕事と両立が難しい。
- 病気になって体が動かないので生活に困る。
本当に多岐にわたります。そのとき、活躍が期待されるのがソーシャルワーカーですね。
ソーシャルワーカーの仕事については、以下を参考にしてください。
生活の困りごとは、人生に直結していくわけですから、非常に重たいものです。しかも、人生はたくさんのエピソードを含んでいるものなので、長く入り組んでいるものです。
ソーシャルワーカーが向き合うのは、貼った切ったのものではない、大切で長くて重たい人生なのです。そういった意味でも、完璧な支援はあり得ないのです。
ソーシャルワーカーの人生について
突然ですが、みなさんの人生はどんな風だったでしょうか。振り返ってみてください。
例えば、ソーシャルワーカーのあなた自身が、
自分の子どもが病気で、看病が本当に大変でした。
というエピソードを持っていたとします。
同じような境遇の方がクライエントだったら、誰よりもクライエントのことをあなたが理解できるのではないでしょうか。
例えば、ソーシャルワーカー自身も、いろいろな人生のキャリアがありますね。
結婚して、子どもを育てながら仕事がしたいです。
もあれば、
シングルで、仕事をバリバリして充実しています。
もあるだろうし、
親の介護をしながら仕事するキャリアもあるだろうし、本当にさまざまでしょう。
ピア・サポートという言葉が私たちにはあります。
当事者同士のサポートですね。
分かち合い助け合いは、そもそも特別なものではありません。
私自身も、20年関わってきてその実感は強まるばかりです。
自分の人生経験が支援にどんどん活かされていきます。
例えば、子育て・子供の病気や親の介護・家の購入の経験すら、いろいろこれまで経験したことで、クライエントの状況がすぐイメージできます。
援助者のどんな人生でも、クライエントの役に立つのです。
それは、ソーシャルワーカー自身も、さまざまな社会資源に囲まれて社会生活を営む人間であるからです。
そこで注意してほしいポイントがあります。ソーシャルワーカーが資源になるためには、転移や逆転移に敏感でなければならないのです。
転移についての理解
ここで転移について引用です。
クライエントがかつて経験した感情や経験、または自分に向けている内的感情を援助関係に投影することを、「転移」という。
転移は、クライエントの対人関係の歴史や特徴、または内的感情を理解する資源であり、臨床診断や援助の方向を検討する上で貴重な資料であるといわれる。
引用:尾崎 新 ケースワークの臨床技術
難しいですよね。例えて、かみ砕きましょう。
私(めざし)は背が高い方なのですが、DVを受けていた女性から、
怖いから横に立たないでください。
と居宅で言われたことがあります。夫は背が高い方でしたので、そのつらい経験から援助者へ投影した結果ですね。
この転移から、DVを受けていた女性に面談するとき、座って面談するようにしました。援助を行う上で、とても大切な情報になるわけです。
逆転移の理解
次は逆転移の説明をしますね。
一方、援助関係の中で、援助者に生じる感情や反応は、「逆転移(あるいは対抗転移)」と呼ばれる。逆転移には、いくつかの種類がある。まず、クライエントから受けとるさまざまな印象も逆転移である。また、援助者がクライエントとは直接関係のない個人的感情をクライエントに向ける逆転移もある。「昔の恋人に似ているから、心惹かれる」などである。さらに、援助者の個人的な心理的・社会的欲求がクライエントに向けられることもある。
引用:尾崎 新 ケースワークの臨床技術
これも難しいので、具体例を挙げます。
例えば、私の逆転移であれば、父親が九州の出身だから、九州なまりのクライエントに勝手に親しみが沸く。といったことになります。
みなさんにもいろんな人生経験から、クライエントへ逆転移を起こします。
「顔が好きなタイプだわ」
とか、
「声のトーンがちょっと苦手」
とかですね。これは悪いことではなく、至極当然のことです。
先ほどのDVを受けていたクライエントと同じことが、ソーシャルワーカーにも起こっているわけです。それを逆転移と呼んでいます。
援助者の感情の重要性を「逆転移はクライエントを理解する『受信器』であり」、「援助者は、自分に生じるさまざまな感情を意識化し、吟味することによって、はじめての判断や見通しをもつことができる」とのべている。こうした意味で、逆転移は活用するという視点から検討すべきである。
引用:尾崎 新 ケースワークの臨床技術
自己覚知の分野が密接です。自己覚知については、以下の記事を参考にしてください。
この逆転移を援助に活用しましょうとここでは説かれているのです。
ここで注目してほしいのが、
自分に起こった逆転移を否定しないことです。
逆転移を否定しない手順
具体例を順を追ってあげますので見ていきましょう。
- クライエントのことがあんまり好きになれない(外に出せないソーシャルワーカーの心の声)
- それは、理屈っぽい別れた彼氏と似ているから(まず意識化する!これ大事)
- そして、この逆転移を否定しない。(私はソーシャルワーカーだから、そんなこと思っちゃダメだと、新人は否定しがちです。)
- これは、逆転移なんだ。(客観視できることが重要です。)
- 活用する方法としては、例えば、理屈っぽいところがあって、こだわりが強い傾向が他者とのコミュニケーション障害になっているかも?など見立てに活用するなどが考えられるでしょう。
まとめ
非常に簡素にまとめると、
「自己覚知等を通じて、ソーシャルワーカー自身を資源として活用できるようになる」
ソーシャルワーカーはクライエントの人権を大事にできるのだから、ソーシャルワーカー自身のことも大事にできる。
ソーシャルワーカーがつらいと思っている方は、こう考えるのはいかがでしょうか。
- ソーシャルワーカーはそもそも重くて長いものを取り扱っている。答えがないから完璧な支援なんかない。
- 力量のない自分を大切に育てていく。
- 自分は向いていない気付きを持てたことが強み。
少しでも、つらいが解消され、続けられるソーシャルワーカーが一人でも多くなりますように。
めざし