全世代型社会保障構築会議報告書 ~ソーシャルワーカーへの期待について~

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気まぐれコラム
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記事の信頼性

医療・高齢・地域福祉でソーシャルワーカーとして、対人援助職20年以上。現職は、地域福祉機関で管理者をしています。
社会福祉士養成校等で、社会福祉士等の養成に関わって約10年。
有資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、公認心理師。ブログ月間1万PV。

このコラムでは、ソーシャルワークやソーシャルワーカーについて(かなり)私見を含めていろいろ思うままに、既存制度や制度改正を中心に記載してきたわけだけど、『コラム的』な記載もやってみようということで、これもまた思うままに今タイプしている。


全世代型社会保障構築会議について

内閣官房主導で全世代型社会保障構築会議が開催されていました。マスコミにおいては、特に出産一時金や児童手当拡大に焦点があたって、報道されているのを見ることが多くなりました。

まぁ私個人は、3人の子どもの父親なので、手当拡充はありがたい話です。物価もマジで高いし・・・、卵高いですよね・・・。他もとても上がっているし、一市民として本当に大変です。

さて、表題の報告書の24ページに本稿で取り上げる『ソーシャルワーカー』への期待が明記されています。

ソーシャルワーカーへの言及

唐突のように感じますが、じつは早い段階から、会議の中でソーシャルワーカーへの言及がありました。構成員の発言を以下に抜粋します。

地域共生社会づくりについてです。今述べた住まいでの見守りとも関連して、金銭、現物、サービスといった実体的な社会保障の給付と並んで、今後の社会保障において重要な役割を果たすのは相談支援、いわゆるソーシャルワークです。単に衣食住が確保されていればよいのではなく、社会とつながりが持てない、生きる意欲が持てない状況にある人々に対し個別に相談支援を行い、社会への包摂を図っていくことがこれからの新しい社会保障の形と思います。
人々が生活し、そうした支援が行われる場としての地域づくりも重要な課題です。政府が本腰を入れて進めている孤独・孤立対策もこうした観点から重要な位置づけを与えられると思います。
往々にして、地域に住まう人々に生じる生活の困り事は複合的であり、高齢、障がい、子ども、困窮、ひとり親といった属性ごとの支援体制ではなく、制度の側がつくった縦割りを排した、多機関連携による包括的な相談支援体制の下で行われる必要があります。(2022-3-9 第2回全世代型社会保障構築会議より 太文字筆者)

この構成員の発言(一現任者として、この会議における当該発言は本当にありがたいです!!)をもとにして、中間整理に「ソーシャルワーカー」が明記されて、地域共生社会づくりにソーシャルワーカーによる相談支援が必要という表現となりました。

その後の会議の中で、別の構成員から人材確保・育成についての発言がありましたので、以下に抜粋します。

(中略)医療・介護分野にとどまらず、障害福祉や児童福祉、保育等の分野において制度を支える人材やサービス提供体制もまだ十分ではありません。子育て世帯の子育ち、子育て支援を行っていくことの必要性を論じて、そのための人材の確保・育成、また、直接関与する人材だけではなく、地域の中で相談支援をコーディネートしていく人材等に関しても、地域包括支援について、全国における体制整備や、過疎地域も含めたオンラインアクセス等が可能となるようなDX化の推進も、これらの領域が立ち後れている状況がございます。(2022-11-24 第9回全世代型社会保障構築会議より 太文字筆者)

保育士や介護福祉士など直接関与する人材はもちろん重要ですが、それだけでなく、地域の中で「コーディネート」していく人材の確保・育成について立ち遅れている現状を説明しています。

この発言をされた構成員が、アドバイザーを務めている保育実践の中に「コミュニティコーディネータ―」の実例があるようですね。

こういった指摘は、ケースワークを中心に行っている現状から、メゾ・マクロの視点をもって統合的なソーシャルワークを実践できる体制整備が重要と理解できます。

全世代型社会保障構築会議報告書について

今回、12月16日にまとめられた報告書をみると、取り組むべき課題としての一項目として、ソーシャルワーカー等の確保・育成が挙げられています。

ソーシャルワーカーの存在が欠かせない。今後、社会福祉法人や NPO 等の職員も含め、ソーシャルワーカーの確保に向けた取組を進めるべきである。(全世代型社会保障構築会議報告書より)

という指摘となっていました。

ソーシャルワーカーの存在が欠かせない」とは、非常に強い文言と感じましたし、これまでの国の公的文書で、私は見たことがありません。

今後の改革の工程について

そして、注目すべきは今後の改革の工程です。
来年度、実施・推進すべき項目として、

  • 重層的支援体制整備事業の更なる促進
  • 多様な専門性や背景を持つソーシャルワーカーの確保・活用のための取組
  • 複数の分野にわたる専門的知識を習得できるような工夫(複数分野の資格の取得、学び直しや中高年の参加の促進も含む。)の検討
  • 多様な主体による地域づくりの推進のためのプラットフォームの構築支援
  • 地域における孤独・孤立対策の官民連携基盤の整備及び取組モデルの構築
  • 社会保障教育の推進
  • 「住まい支援システム」の構築に向けたモデル事業 20の実施を踏まえた実践面での課題の抽出、全国的な普及に向けた具体的な手法の周知・啓発
  • 上記モデル事業の成果を活用して、住まいに課題を抱える者の属性や量的な把握についての推計及びその精緻化を実施
  • 生活困窮者自立支援制度、住宅セーフティネット制度などにおける住まい支援を強化

となっていました。厚生労働省が従前に「地域共生社会の実現に向けた地域福祉の推進について」において、取り上げてきた「ソーシャルワーカーソーシャルワーク機能を果たす者」への活用が、今後本格的に動き出していく予兆を、私はこの報告書から感じています。

来年度以降、その具体的な取り組みに是非注目して、現場の力にしていきたいですね!

めざし

「地域共生社会の実現に向けた地域福祉の推進について」や、「重層的支援体制整備事業」の記事は以下を参考にしてみてください。

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