
地域包括支援センターは何するところなの?高齢者の相談窓口というけど、よくわからないわ。
ここでは、こんな疑問にお答えしたいと思います。
全国に設置されている地域包括支援センターですが、どのような相談事例があるのでしょうか?
包括経験者の筆者が具体的な事例を紹介して、分かりやすく解説していきます。
この記事の信頼性

医療・高齢・地域福祉でソーシャルワーカーとして、対人援助職20年になります。現職は、地域福祉機関で管理者をしています。
社会福祉士養成校等で、社会福祉士等の養成に関わって8年。
有資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、公認心理師。
記事の内容
- 【導入】相談事例紹介
- 【基本】介護保険上の法的・法律根拠
- 【基本②】業務内容
- 【まとめ】地域包括支援センターとは
相談事例紹介
相談事例① 退院後の生活が不安

夫が転倒して、家で転んで足の骨折をしました。
その後、病院でリハビリを受けて、主治医から退院と言われています。
でも、自宅に戻ってくるにしても、階段もあってどう準備したらよいか・・・。
Aさんのように、自宅に帰られる際の生活環境を整えるご相談はよくある相談です。
地域包括支援センターは、高齢者の総合相談という役割ですが、それだけではよくわかりにくいですよね。
本人の身体状況に合わせて、必要なサービスを考えるのが包括支援センターの大きな役割の一つになります。具体的な流れを見ていきましょう。
- Aさんは、何とか屋内での歩行ができる身体の状態でした。
- 地域包括支援センターの主任ケアマネジャーは、本人の安全な屋内動作の獲得のために、手すりの取り付け等を準備する計画を立てます。
- 介護保険新規申請し、手すりの設置や福祉用具レンタルを予定しました。
- 病院から自宅に家庭訪問があり、手すりの取り付け位置について、事前に話し合いました。
- 退院後すぐに、手すりの取り付けや福祉用具レンタルが開始されました。
Aさんのような入院によって、身体の状況が変化することが多くあります。

身体や心など変化のあるタイミングで、地域包括支援センターに相談をすることで、スムーズに自宅生活を継続することが大切ですね。
相談事例② 認知症?自宅介護が心配

最近、主人が性格が変わってしまったのか、怒りっぽくなってしまいました。
物忘れも多くなってきて、これからどうしたらよいのでしょうか?
認知症やその他の何らかの精神疾患によって、生活に困っているという相談が多くあります。
地域包括支援センターでは、認知症についてのいろんな事業(認知症地域支援施策推進事業)を行っていたり、市町村が行っている認知症についての情報を持っています。
認知症を疑う、また認知症の人への効果的な支援を行うことが大切になります。
具体的なBさんの流れをみていきましょう。
- Bさんが認知症かどうか精査する目的で、包括の社会福祉士は、認知症初期集中支援チームを発動しました。
- かかりつけ医とも連携し、認知症診断によって、内服加療が開始されました。
- 妻へは、介護方法(接し方など)について学ぶ機会をつくったり、地域で活動している認知症カフェの紹介を行いました。
現状では、認知症によって生活に支障が出始めるのは、だいぶん後になってからがほとんどです。

このように認知症についてのいろいろな情報を地域包括支援センターは持っていますので、困ったときには、心強い味方になります。
相談事例③ 外出が減って、閉じこもりになって、心配です。

一人暮らしをしている母親が、最近閉じこもりになって、身体も心も元気がなくて心配しています。
閉じこもりになるきっかけは様々です。ちょっと足をくじいた・飼っていた犬が亡くなって気分が落ち込んでいる・引っ越してきたばかりで知り合いがないなども理由になります。
身体的・心理的・社会的な理由で、閉じこもりいわゆる「不活発」になっている高齢者についてのご相談は多くあります。
この不活発をいかに予防するのかが大切になりますね。
具体的なCさんの例を見ていきましょう。
- 訪問してCさんと包括の保健師と面談を行いました。Cさんは入院をきっかけに不活発になっていました。
- もともとは、写真が好きで地域の趣味活動にも参加されていました。
- 包括主催の介護予防教室を案内し、自宅でできる健康体操や栄養に関する講座を受けてもらいました。
- 地域の民生委員とも連携して、地域のサロンへの参加をされるようになりました。
介護予防は本人の自立を支援するために行うものです。

本人の過去には必ず強みがありますので、本人・家族とともに自立を支援する方法を考えていきます。是非、寄り添ってもらいましょう。
地域包括支援センターについて

法的根拠
地域包括支援センターが設置されたのは、平成18年からです。
意外にも介護保険制度とともにではありませんでした。
法的根拠としては、
介護保険法第115条の46「地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設」
となります。
つまり・・・高齢者が住み慣れた地域で安心して過ごすことができるようにすることを目的としています。
設置主体は市町村。または、市町村から委託を受けた法人となっています。
配置されている職種は、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等になります。
全国で5,351か所(ブランチ等を含め7,386か所)※令和3年4月末現在厚生労働省老健局
厚生労働省資料はこちら
目的を達成するための視点
高齢者が住み慣れた地域で安心して過ごすことができるようにする目的を達成するための視点が4つあります。次は、それを見ていきましょう。
<統合性>高齢者の多様な相談を総合的に受け止め、尊厳ある生活の継続のために必要な支援につなぐこと。
多様な相談とあるように、ここで紹介させてもらった事例の他にも、生活の困りごとは多くあります。
それをしっかり「受け止める」のが地域包括支援センターの大切な視点になります。
在宅での支援は、基本的には家に赴いていく(アウトリーチ)になります。
これまでの社会福祉活動の原型がアウトリーチにあります。日本においては、友愛訪問から始まった方面委員、民生委員の活動においても、アウトリーチを100年前から行ってます。
地域包括支援センターは、基本的には日常生活圏域(中学校校区)に配置されているので、アウトリーチが可能な施設です。
そして、相談を受け止めたうえで、きちんと支援につなげていく視点が大変重要です。
<包括性>介護保険サービスのみならず、地域の保健・医療・福祉サービスやボランティア活動、支え合いなど多様な社会資源を有機的に結び付けること。
「有機的に結び付ける」といわれても、よくわかりませんね💦
介護のことであれば、「介護保険」だけではありません。事例で紹介したように、地域のサロン活動や民生委員さんの存在も高齢者にとって大切な資源です。
それらを把握して、高齢者にとってのベターを一緒に探してくれるのが地域包括支援センターになります。
<継続性>高齢者の心身の状態の変化に応じて、生活の質の確保を目指し適切なサービスを継続的に提供すること。
事例のように、入退院することで高齢者の心身の状況は大きく変わる場合があります。
生活はいろんなことが連続して成り立っています。
例えば、朝起きて、顔を洗って、トイレに行って、朝食をとって歯を磨くみたいな当たり前のことです。
心身の変化によって、これまでつながっていたいろんなことを、うまくできなくなってしまいます。
これらをスムーズになるように支援を考えるのが地域包括支援センターの大切な視点になります。
そして、これまで生きてこられた「過去」にはその方の強みがあり、「現在」、「未来」の時間軸で高齢者の生活の継続性を見ることが重要です。
高齢者の生活を支えるのは、ケアマネジャーも大切な職種になります。ケアマネジャーの選び方、相談の仕方、変え方について、解説していますので、参考にしてください。
<予防性>地域の高齢化率の推計、世帯形態などの予測、地域住民の声の把握などをもとに、地域における将来の課題を見据えた予防的対応をすること。
小学校区単位で見たら、地域の高齢化率においても、特徴があります。30%近かったり、逆に高齢化率が下がっている校区も見受けられるなど、校区によってその推計は様々です。
そして地域住民の生活課題も様々な特徴があります。先ほどの総合相談を軸にしながら、客観的データを踏まえて、住民のニーズを把握することが大切な視点になります。
そこから、この校区に何が課題なのか分析して、どのような予防対応が必要なのかを考えることが大切です。
目的を達成するために期待される機能
<地域のネットワーク構築機能>関連機関と連携しながら地域におけるフォーマル及びインフォーマルな社会資源を網のように相互につなげていく必要があります。このような地域の人々のつながりは、住民への情報提供、住民のニーズの発見、住民による支援、専門職の連携などを可能にします。
フォーマルというのは、公的です。インフォーマルというのはその逆ですね。公的介護保険や公的医療保険だけではなくて、地域にはサロン活動や有償ボランティアなどいろんな資源があります。それらをつなげていくことが大切な機能です。
<ワンストップサービス窓口機能>どのようなサービスを利用してよいかわからない住民に対して、1か所で相談からサービスの調整に至る機能を発揮する、いわばワンストップサービスの拠点として機能することが期待されています。
<権利擁護機能>高齢者本人が有する権利を理解してもらうとともに、権利侵害の予防・発見、権利保障に向けた対策を行います。
権利擁護とは、いわゆる成年後見制度や消費者被害防止や詐欺被害防止が中心となりますが、それだけではありません。適切な総合相談やケアマネジメントを行うことも権利擁護の一環になります。
権利擁護を中心に担う「社会福祉士」については、以下の記事を参考にしてくださいね。
<介護支援専門員支援機能>地域の介護支援専門員が包括的・継続的ケアマネジメントを実践できるように、直接的または間接的に支援を行っていきます。
これがあんまり知られていないところで、介護支援専門員(ケアマネジャー)の支援を地域包括支援センターは行っています。困難事例の後方支援を行ったり、ケアマネジャーのスキルアップのための研修会を企画立案実施しています。
まとめ

ここまで、地域包括支援センターについて解説してきました。
実際に関わっていて、素直に思うことは、地域包括支援センターは、高齢者のよろず相談所といったところだと思います。
勤めている職員は、高齢者についてのスペシャリストです。また、高齢者に関わる地域の実情に最も精通している施設といってよいでしょう。
高齢者のことで悩んだら、まず相談してみることを是非お勧めします。
めざし