ケアマネジャーの選び方が分からないわ。どうしたらよいのかしら?
介護サービスを利用するためには、ケアプランが必要になります。
そのケアプランを作成するのが介護支援専門員(以下ケアマネジャー)の大切な役割の一つです。
ここでは、地域包括支援センターでの実務経験がある筆者がケアマネジャーの選び方のポイントを、解説していきたいと思います。
記事の内容
- 【導入】押さえておきたい!ケアマネジャーとは?
- 【基礎】そうだったのか、ケアマネジャーの探し方
- 【応用】知って得する、ケアマネジャーへの相談の仕方
- 【発展】ケアマネジャーの変え方・交代について
- 【まとめ】
記事の信頼性
医療・高齢・地域福祉でソーシャルワーカーとして、対人援助職20年になります。現職は、地域福祉機関で管理者をしています。
社会福祉士養成校等で、社会福祉士等の養成に関わって8年。
有資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、公認心理師。
まずは、ケアマネジャーという職業について、ここではざっくりと触れていきましょう。
ケアマネジャー(介護支援専門員)について
ケアマネジャーとは?
ケアマネジャーとは何かは、以下の3点にまとめられます。
- 要介護者や要支援者の人の相談に応じます。
- 介護サービス(訪問介護、デイサービスなど)を受けられるようにケアプラン(介護サービス等の提供についての計画)の作成をします。
- 市町村・サービス事業者・施設等との連絡調整を行います。
直接、サービスを提供する仕事ではないことが分かりますね。
そして、「要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術を有するもの」と規定されています。
要介護・要支援者を支える介護の専門職ですね。
「ケアプラン」について
ここで「ケアプラン」について、少し解説をしたいと思います。
たとえば、医療においては、健康保険証を持っているだけでは、薬はもらえません。受診して、お薬の処方箋をもらいます。
同じように、介護保険も介護認定を受けるだけでは、サービスは受けることができません。ケアプランの作成によって、サービスが受けることができます。
医師でもない本人が自分で診断することはできませんが、介護保険においては、自分でケアプランを作成すること(セルフプラン)が認められています。
このセルフプランは本人の「尊厳の保持」という介護保険の大切な側面になります。
ですが、制度上は、自分で作成したケアプランは、市町村に提出して「承認」を得なければなりません。
勝手に、サービス利用は認められないわけです。
セルフプランは、利用者 約3,922万人に占める割合が「0.05%」という非常に低い割合になっています。(令和元年度老人保健健康増進等事業 「セルフケアプランに関する調査)
実態としては、本人の「ケアプラン」を作成するいわゆる代理人がケアマネジャーと考えていいでしょう。
ケアマネジャーになるには
ケアマネジャーには以下の順序でなることができます。
- 保健医療福祉分野での実務経験(医師、看護師、社会福祉士、介護福祉士等)が5年以上である者
- 介護支援専門員実務研修受講試験に合格する
- 介護支援専門員実務研修の課程を修了する
- 介護支援専門員証の交付を受ける
1から4を経て、はれて「ケアマネジャー」(介護支援専門員)となることができます。
よくケアマネジャーは国家資格なのか?という質問があります。
ケアマネジャーは、国家資格ではありません。
厳密に言うと、研修を受けるための「受講試験」に合格するということになります。
業務内容
具体的な業務内容をみていきましょう。
介護保険制度の言葉によく「居宅」という言葉が出てきます。あまり聞きなれない言葉ですが、文字通り「住んでいる家」であり、「在宅」を指します。
また「居宅」と区別して「施設」が位置づけられています。
居宅における業務
要介護者や要支援者の人の相談を受け、ケアプランを作成するとともに、居宅サービス事業者等との連絡調整や、入所を必要とする場合の介護保険施設への紹介などを行います。
主に居宅介護支援事業所(ケアマネジャーが在籍している所)、介護予防支援事業所(地域包括支援センター)で働いています。
地域包括支援センターについては、以下を参照くださいね。
施設などにおける業務
施設等のサービスを利用している利用者が自立した日常生活を営むことができるように支援するため、解決すべき課題の把握等を行った上で、施設サービス計画等を作成します。
施設等では、施設サービス計画等に基づき、サービスを実施します。
ケアマネジャーの探し方・選び方
さて、いよいよ本題ですね。ケアマネジャーの探し方・選び方です。
施設のケアマネジャーは、施設に入所することによって担当者が決まります。
ですのでここでは、居宅のケアマネジャーの探し方を紹介していきます。
探し方としては、以下の3つ方法を挙げたいと思います。
- 地域包括支援センターに相談する
- 運営母体から決める
- 併設サービスから決める
地域包括支援センターに相談する
お住いの地域には地域包括支援センターが設置されています。
65歳以上の総合相談の窓口であり、市が運営しているか、法人に委託している出先機関になります。
私自身、地域包括支援センターに勤めている経験があるので、「ケアマネジャーを探している」「要介護の認定が出た。どうしたらよいか」などのご相談は日ごろから多くあります。
地域包括支援センターはその業務から、
- ここの居宅介護支援事業所が新規を担当できると言っていた。
- あそこに新しいケアマネジャーが入職した。
など最新の情報を持ち合わせています。また、
- ここの居宅介護支援事業所は10年以上のベテランが多い。
- あそこには、男性ケアマネジャーが在籍している。
- あの居宅介護支援事業所には、看護師が元職のケアマネジャーがいる。
など、ケアマネジャーに関する細かい情報も把握しています。
ですので、地域包括支援センターに尋ねてみるということをやはりお勧めします。
ただ、注意点を挙げるとするならば、基本的に地域包括支援センターは日常生活圏域にて活動しています。
日ごろやり取りする事業所もその分、圏域内が多くなります。
したがって、地域包括支援センターの把握の範囲は狭いのです。
お住いの市町村が人口2~3万人であれば、1か所の地域包括支援センターが把握できていますが、人口がそれ以上になれば、地域包括支援センターが複数個所設置されている可能性があります。
地域包括支援センターには、そういった限界点があることを知っておきましょう。
地域包括支援センターについては、以下のページを参考にしてください。
運営母体から選択する
居宅介護支援事業所も母体となる運営会社があります。
以下の表は厚生労働省から参照して、筆者が作成したものです。これを見ていきましょう。
ケアマネジャーが在籍しているのは、一番下の居宅介護支援事業所になります。
この資料から分かるように、ケアマネジャーがいる事業所は、半数以上が営利会社が運営母体ということになります。市町村が運営しているところはほとんどありません。
あなたが住む町で、その運営母体が、安心できる法人や会社なのか、また、小さいけれどしっかりやっているなどの地域の口コミや、法人や事業所が積み重ねてきた信頼の実績ということも、選ぶ際の大きな要素になるでしょう。
併設サービスから選択する
先ほどの構成割合からも、通所リハビリテーションや訪問看護ステーションなどの医療サービスについては、医師を配置しなければならない設置基準から医療法人が多く事業所を運営していることがわかります。
イメージとしては、かかりつけの先生が訪問看護ステーションも行っている。といったところです。
医療サービスを受ける必要がある利用者は、かかりつけ医に相談して併設居宅介護支援事業所や、よく連携をとっているケアマネジャーを紹介してもらうことが考えられます。
また、入浴目的でデイサービスを利用したい場合、行き届かない掃除目的で、ヘルパーを利用したい場合は、併設している居宅介護支援事業所が、営利法人を含め多くあります。同一法人の職員ですので、お互いはよく知った顔になりますので、連携はスムーズです。
単独の居宅介護支援事業所のメリットについて
ほとんど数はありませんが、1割程度、居宅介護支援事業所のみを運営しているところもあります。
メリットとしては、公正中立性が非常に高い点です。
- 作成するケアプランが、特定のサービス事業所へ集中することが少ない。
- 利用者に対して、特定の事業者を利用するように誘導も考えにくい。
上記のようなサービスの偏りを防止するために、運営規定や報酬の減算などで規制はあるものの、実態としては、営利法人が運営しているので、完全な中立性は難しいのが現状です。
だからこそ、単独での居宅介護支援事業所の強みがあると言えます。
このように、ケアマネジャーの選び方については、答えが用意されているわけではありません。
ここで紹介した方法を参考にしていただいて、利用者やご家族の状況によって、よりよいケアマネジャー選びを行っていただければと思います。
ケアマネジャーへの相談の仕方
いよいよ担当のケアマネジャーとの面談です。
重要事項説明書と契約書を取り交わして、これから利用者家族のためにしっかりと関りを持ってもらいたいものですよね。
ここでは、ケアマネジャーへの相談の仕方について解説していきたいと思います。
ケアマネジャーへの相談は以下の内容が挙げられます。
- 利用者や家族のストレスを生み出す物事を聴いてもらう。
- 利用者と家族の関係性、家族同士の関係性、近隣や自治会等との関係性について話す。
- 利用者や家族はどんなふうにこれまで生きてきたかを語る。
- 今悩んでいることに対して、どんなふうに思っているのか話す。
言えばしっかりと、「聴いてくれる」かどうか
ケアマネジャーは必ず「本人は何でいちばん困っているのか」を本人自身の口から聴くことが求められています。
とはいっても、家族の悩みを打ち明けるのは、なかなかできないことですよね。
利用者家族の立場から考えれば、担当するケアマネジャーに、家族介護の問題を打ち明けられるのかどうかは大変重要なポイントです。
「言えばしっかりと、聴いてくれるだろう」と利用者家族が思えるかどうか。この関係性が築くことができないと、適切な援助をこれから期待することはできないのです。
この関係性は、書類上契約したからといって、成り立つものではありません。
なぜ、ケアマネジャーとの関係性がそんなに重要なのでしょうか。
たとえば、医師であれば適切な診断をするためにいろんな検査をします。患者としてあなたが検査を拒否すれば、医師はたちまち適切な診断はできなくなってしまいます。
同じように、ケアマネジャーも面接を通じて情報収集し、課題を把握し分析を行います。これを「アセスメント」といいます。
アセスメントは、利用者家族とケアマネジャーで成り立つ共同作業ですので、この2者の話せる関係性が大変重要になります。
いろんな家族内の関係性について
利用者や家族がどれほど「介護の力」があるのかで家族の負担は変わってきます。
家族間の関係性などは、微妙なこともあるでしょう。例えば、きょうだいとの関係性があまりよくなく、介護の協力が得られにくいこともあるかもしれません。
また、家族には独自の規範や規則があります。母が父権的だったなど、それは家族によってバラバラです。
そういった家族の関係性の情報は大変重要です。
ケアマネジャーが行う情報収集は、本人のみと思いがちですが、支える家族のこと、それを取り巻く環境の情報も大切になります。
- 近くに住む兄が、実は協力的でないんです。
- いとこに時々相談しています。昔から仲がいいです。
- 夫の姉が介護について納得していなくて・・・。
- 父にやっぱり相談しないと・・・。
担当するケアマネジャーに「話しても良い」と思われたら、家族の関係性について話してみてくださいね。
これまでのエピソードを語る
介護の問題は、現時点の問題です。当たり前なのですが・・・。
ということは、ケアマネジャーも、今のことしかわかりません。
介護保険の理念である「尊厳」を守ってもらうためには、尊厳のあるこれまでの人生について、知ってもらうことが大切です。
そこには、利用者家族のこれまで培ってこられた「しなやかさ」や「力強さ」が必ずあります。
介護の問題に直面すると、そのことで手一杯になって、余裕がありません。
利用者本人も身体やこころがつらい状態。介護する家族も日々の介護のルーティンで疲れ切っています。
そんな時に、自分の価値に気づくことはできにくいものです。
ケアマネジャーにいままで歩んできた利用者家族の人生を話すことで、問題対処の糸口を一緒に探してもらいましょう。
- 職人の仕事をしていました。昔はよく儲かった。頑張って仕事してきた。
- 写真を撮るのが好きで、展示を出したりしていました。
- フラワーアレンジメントを教えていました。
- 孫がスポーツ選手で活躍していたよ。
私がこれまで聞いてきたほんの一例です。そこには、たくさんの人生があります。
こういう「語る」とき、みなさん目をキラキラさせて嬉しそうに話されています。
ケアマネジャーは利用者家族の長所や強みは何かを常に探しています。それは尊厳を守るため、ケアプランに必要な情報だからです。
ここまでのケアマネジャーへの相談の仕方をまとめると、
利用者家族のライフストーリー(人生の語り)を大切にしてもらえるかどうかです。
選び方にも直結してますね。
ケアマネジャーの変え方・交代について
ケアマネジャーに担当してもらったけど、いろいろ思うところがあって・・・、このまま担当してもらうのは不安があるわ。
担当するケアマネジャーも様々ですので、いろんな悩みもでてくるでしょう。
尊厳を守るのが大切なケアマネジャーの役割ですから、信頼できなければ任せることはできません。
担当者の変更は、もちろん可能なことになります。
ここでは、ケアマネジャーの変え方や交代について解説していきましょう。
変えてほしい理由の伝え方
そういった申し出を受け付けた時は、私は必ず「変えてほしい理由」を聞くようにしています。
それは、同じことを繰り返さないために必要なことです。
変更の理由としては、以下の相談が多くあります。
- 話をきちんと聞いてもらえなかった。
- 頼んだことをやってくれなかった。
- 電話をしてもつながりにくい。
利用者家族が満足しなかった理由は、今後担当を引き継ぐケアマネジャーにとっては大切な注意点になります。
ですので、担当のケアマネジャーへ直接は言えないにしても、変更を調整する方には、変更したい理由を伝えるようにしましょう。
居宅介護支援事業所内での変更
居宅介護支援事業所との契約であって、利用者とケアマネジャーとの契約ではありません。
ですので、まずは、居宅介護支援事業所内での変更を検討してもらいましょう。
1事業所あたりのケアマネジャーの人数は2.7人(厚生労働省)となっていますので、複数人職場であることが多くなっています。
契約書に書かれている管理者に相談するのが良いでしょう。
居宅介護支援事業所の変更
そして、最終的には居宅介護支援事業所ごと変更することです。
そのためには、やはり地域包括支援センターに、変更したい旨を相談するのが良いでしょう。
実際、地域包括支援センターでの実務において「ケアマネジャーを変更したい」という相談は尽きません。
しっかり、「変更したい旨」を伝えていきましょう。
まとめ
ケアマネジャーの探し方・選び方としては、地域包括支援センターに相談すること、運営母体から選択すること、併設サービスから選択すること、単独の居宅介護支援事業所のメリットについて知ることを解説しました。
ケアマネジャーへの相談の仕方は、①言えばしっかりと「聴いてくれる」かどうか、②いろんな家族内の関係性について話すこと、③これまでのエピソードを語ることの大切さについて触れました。
ケアマネジャーの変え方・交代については、変えてほしい理由について伝える重要性等について説明してきました。
みなさまにとって、より良い介護が提供されますように。
めざし