記事の信頼性
医療・高齢・地域福祉でソーシャルワーカーとして、対人援助職20年以上。現職は、地域福祉機関で管理者をしています。
社会福祉士養成校等で、社会福祉士等の養成に関わって約10年。
有資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、公認心理師。ブログ月間1万PV。
最近、とても目にするとが増えてきた「地域課題の把握」という言葉。
私は、現在介護保険下で実務に携わっていますので、地域包括ケアシステムの根幹を支える一つとして、地域課題を把握して、その取り組みを前にすすめていっている真っ最中です。
ここでは、「地域課題」について把握することがとても横断的であって、今や福祉業界にとっては大変メジャーになっている現状を各法律に基づいて触れていきたいと思います。
「個人に対する支援の充実」が大変重要
まず、「地域課題」と聞くとなんだか、大きな話といった印象があると思います。それはその通りで、市町村全体の地域課題といった捉え方もできるので、大きい話ですよね。少し小さく生活圏域や校区と捉えなおしても、やっぱり範囲が大きい気がします。
でも、どの地域課題の把握にも「個人に対する支援の充実」といった視座が大変重要になっています。全体的な福祉の向上というところから出発するのではなく、高齢者個人から始まるということです。
個人とは、例えば、ごみ問題を抱えた高齢者自身であり、当事者への支援の充実を検討し実施していくことが大切になります。
ですので、現任のソーシャルワーカーやケースワーカー、そしてケアマネジャーとしては、ケースワークやケアマネジメントを軸とすることが大切になるということになります。
以下は、介護保険法においての地域ケア会議の説明になります。
この概念図にあるように、地域課題の把握を行って、地域に必要な地域づくりや資源開発を行っていくこと。そして、政策形成の一端を支えていくことが重要になります。
でも、説明冒頭にあるように「高齢者個人に対する支援」の充実がまず最初にあるべきですし、そこを外しては地域課題の把握はできません。
他法の「地域課題の把握」について
こういった現場からの「地域課題」を上げていく手法は、介護保険だけではありません。
ここから、本稿の本題、他法の状況を見ていきたいと思います。
障害者総合支援法 H24~
障害分野では、介護分野よりも先だってこのプロセスが始まっていました。この概念図を参照にしていきましょう。
障害分野においては、「自立支援協議会」として、会議体が設置されています。
AさんやBさんといった個別ケースの支援会議が軸になっていることがわかります。
しかも、「命綱」という表現になっている。本会の生命線という位置づけで、個別ケースをおろそかにすることはこの自立支援協議会が成り立たないんだということになります。
障害分野は特に当事者団体がその礎にあるので、現場の意見を反映させていくという強い思想があると思うし、このボトムアップの形が障害分野から始まったのも頷けるような気がしています。
個別課題を集約して、社会資源の改善・開発を全体(市町村)へ提案していく形が示されています。
細かい各論は違いはあるものの、この全体的なプロセスを、介護保険の地域ケア会議が参考にしたと言って良いと思います。
生活困窮者自立支援法 H27~
生活困窮者自立支援法の内容です。生活保護法とはまた異なる法律ですね。
就労支援や家計改善といった生活困窮者のための制度です。生活保護と既存の社会保障の間をサポートする制度になります。
この法律の中に「支援会議」というものがあって、深刻な困窮状態にあるケース検討を行うとあります。いわゆる困難事例ですね。
必要な支援体制の検討を行うとあります。厚労省の通知文などをみると、ここでも地域課題を抽出すると明記されています。
社会福祉法 重層的支援体制整備事業 R3~
そして、重層的支援体制整備です。
8050などの「世帯」への支援、その特性や年齢で縦割りを無くそうと立ち上がった新しい事業になります。
根拠法は社会福祉法になります。社会福祉法は、社会福祉を目的とする事業の全分野における共通的基本事項を定めている大本の法律です。
先ほど紹介した障害福祉や生活困窮自立支援法は社会福祉法に紐づいている一事業です。
ここにも「支援会議」が設置されていることがわかります。
文面を見ると「支援が届いていない個々の事案」としています。
周りの専門職などは、「問題がある」と思っていても、当人たちは問題と思っていない。こういった事例も想定されていて、パワーレスな世帯はどんどん増えているし、ここをしっかり世帯ごとまるごと支えるのが重層の大きな役割の一つです。
重層的支援体制整備事業とソーシャルワークについては、以下のページを参考にしてくださいね。
内容は先ほどの生活困窮をモデルにしていることがわかりますね。文言が全く一緒なので。
これまでの実践がここに反映されているということになります。
精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築(精神にも包括)
そして、まだ改正まではしていないのですが、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムが提示されています。
これを受けて、精神保健の分野は、介護保険の地域包括ケアシステムと同じ考え方で、方向付けが決まっています。
介護保険下においては、認知症の周辺症状からの地域課題として取り上げられています。
認知症も精神疾患の一部ですから、この2つの領域の「親和性」が大変高いと個人的には思っています。
この考え方の発表の後、「精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」が報告書をまとめていました。以下を参考にしてくださいね。
精神分野についての「会議体」については新しく設置というよりは、既存を活用するとなっています。
まとめ
これまでのところをまとめていきましょう。
- 介護保険法(115条48) 地域ケア会議
- 障害者総合支援法(89条3)自立支援協議会
- 生活困窮者自立支援法(9条1)支援会議
- 社会福祉法(106条6) 重層的支援体制整備事業 重層支援会議
- (精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組み)精神保健福祉法 今後
このように個別のケースワークやケアマネジメントを軸にして、地域課題を把握していく手法は、介護保険だけではなく、既に福祉業界にとっては主流と言えるわけです。
困難事例に対応できる能力は多岐にわたります。ソーシャルワーカーにとって必要になる能力は以下にまとめていますので参考にしてください。
地域課題を捉えるために必要な能力については、高齢分野に留まらないどこにいっても求められる能力であり、その幅広く適応できるというもので、汎用性が大変高い能力ということになります。