介護予防ケアマネジメントと介護予防支援の違いについて ~ケアマネジメントについての令和6年度介護保険改正の着目点~

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コラム
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介護予防ケアマネジメントと介護予防支援ってどう違うのかな?よくわからないよ。

介護保険に位置付けられたケアマネジメントは2つあります。

この2つは、「ケアマネジメント」としては同じであるものの、制度的な位置づけが全く異なります

その違いについて、理解しておきたいポイントを地域包括支援センターの実務経験者が解説していきます。

さらに、そのポイントを踏まえて、令和6年(2024年)介護保険改正にむけてのケアマネジメントに関する着目点ついて少し触れています。

記事の内容

  • これまでの介護保険における「ケアマネジメント」の現状
  • 介護予防ケアマネジメントの歴史について
  • 介護予防ケアマネジメントについて
  • 委託と指定について
  • ケアマネジメントの令和6年度介護保険改正の着目点

記事の信頼性

医療・高齢・地域福祉でソーシャルワーカーとして、対人援助職20年になります。現職は、地域福祉機関で管理者をしています。
社会福祉士養成校等で、社会福祉士等の養成に関わって8年。
有資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、公認心理師。


これまでの介護保険における「ケアマネジメント」の現状

介護保険制度は2000年に創設されました。

介護保険制度ができてから既に、20年が経過しています。今となっては、国民にとって身近な制度になってきました。

私は一現任者ですので、総合相談では、親が介護サービスを利用していたという子ども世代の介護相談も次第に増えてきました。現場の人間としては、20年という時の流れを肌身で感じています。

介護保険に関する直近のデータを見てみましょう。

  • 令和3年2月末現在(介護保険事業状況報告の概要 厚生労働省より)
  • 第1号被保険者数  第1号被保険者数は、3,577万人
    要介護(要支援)認定者数 679.6万人
  • うち男性が215.2万人、女性が464.5万人
  • 居宅(介護予防)サービス受給者数は、398.8万人

介護サービスを利用するためには、ケアプラン(介護サービス計画書)が必要になります。

ですので実に、400万人の方々ケアプランを作成し、介護サービスを受けていることになります。

ケアプランは、高齢者の「生活の質」の維持・向上を目指すために、担当者が利用者の立場でそのニーズを把握し、関係者がチームになって実行していくサービスの方針になります。

このケアプランを作り、実行していく仕組みがまさに「ケアマネジメント」です。

介護保険におけるケアマネジメントは、20年が経過して、介護を必要とする高齢者を支える制度として定着してきていると言えるでしょう。

ケアプランを作成するケアマネジャー(介護支援専門員)については、以下のサイトでまとめています。読んでくださいね。

2種類あるケアマネジメントの比較

冒頭にケアマネジメントは、2つあると説明しました。

それは、介護予防支援居宅介護支援といった従来の契約に基づくケアマネジメントと、総合事業で位置づけられた介護予防ケアマネジメントになります。

以下はその比較図を作成してみました。

種別ケアマネジメントの種類対象者利用者セルフプラン
指定事業居宅介護支援要介護1~5契約あり
指定事業介護予防支援要支援1・2契約あり
委託事業介護予防ケアマネジメント事業対象者・要支援1・2重要事項説明想定していない
ケアマネジメントの比較

ケアマネジメントといえば、そのほとんどが①と②が該当します。これがいわゆるメジャーですね。

③はいわゆる総合事業という枠組みで提供されるケアマネジメントになりますので、400万人という総数からはわずかなパーセントになります。

全体としては、①が大多数で、②が少数、③はもっと少数といったところです。

①と②は、認定区分が要介護が居宅介護支援が担当し、要支援が介護予防支援が担当する他はまったく同じシステムです。

一方、③は委託事業やセルフプランなどから、大きく制度の建てつけが異なっていることが分かります。

③は総合事業で実施されていますので、まず、総合事業について簡単に説明したいと思います。

総合事業について

総合事業については、以下を参考にしましょう。

「介護予防・日常生活支援総合事業のガイドラインについて」(平成 27 年6月5日老発 0605 第5号厚生労働省老健局長通知)からの抜粋です。

要支援者等の多様な生活支援ニーズについて、従来予防給付として提供されていた全国一律の介護予防訪問介護及び介護予防通所介護(以下「介護予防訪問介護等」という。)を、市町村の実施する総合事業に移行し、要支援者自身の能力を最大限活かしつつ、介護予防訪問介護等と住民等が参画するような多様なサービスを総合的に提供可能な仕組みに見直すこととした。

ここでは、総合事業については説明は詳しくはふれませんが、市町村での制度のカスタマイズができるようにしたのが、総合事業の大きな特徴になります。

現在、ガイドラインに沿って、その地域地域で様々な取り組みが行われるに至っています。

地域包括支援センターについての地域福祉の実践は以下の記事を参考にしてくださいね。

介護予防ケアマネジメントの歴史について

ここから、③の介護予防ケアマネジメントについて解説しています。

その前に、整理しておきたいことがあります。

介護予防ケアマネジメントは、総合事業が開始される以前、実は、包括的支援事業に位置付けられていました。

ですので、新旧同じ呼び方ではややこしいので、ここでは古い方を介護予防ケアマネジメント(旧)と呼ぶことにします。

包括的支援事業とは何かはここでは詳しくは触れませんが、地域包括支援センターの事業そのものを思っていただいたら良いです。

ですので、介護予防ケアマネジメント(旧)は包括の中の一つの業務であったということです。マニアックな話になるので、あまり一般的には知られていないことですね。

従来の介護予防事業について

今後のケアマネジメントを考える上で、大切になる以前からあった介護予防ケアマネジメント(旧)と介護予防事業について、まず解説したいと思います。

まず、介護予防事業についてみていきましょう。

聞きなれない言葉ですよね。私も、包括で働く前はあまり馴染みがありませんでした。

でも、介護予防を学ぶ上では、とても大切な項目になります。保健師職の方々にとっては、基礎知識になりますね。

以下の表に簡単にまとめてみましたので、それを見てみましょう。

一次予防事業介護予防普及啓発等健康な者を対象に、発病そのものを予防する取り組み(健康づくり、疾病予防)
二次予防事業事業対象者の把握事業、評価事業等すでに疾病を保有する者を対象に、症状が出現する前の時点で早期発見し、早期治療する取り組み。
三次予防介護予防支援・居宅介護支援要支援・要介護状態にある高齢者を対象に、要介護状態の改善や重度化を予防。
従来の包括的支援事業の介護予防事業について

この健康づくりを担う一次予防早期発見の二次予防介護予防事業として地域包括支援センターに位置付けられていました。

三次予防については、重度化予防ということで、要支援や要介護の高齢者を指しています。

こういった介護予防の段階については、厚生労働省の以下の図が分かりやすいので掲載しておきます。

引用:介護予防マニュアル 厚生労働省

包括的支援事業の介護予防ケアマネジメント業務について

そして、次は以前からあった介護予防ケアマネジメント(旧)を見ていきましょう。

二次予防事業早期発見でしたね。この早期発見のツールとして使用されていたのが、基本チェックリストになります。

早期発見した対象者に対して、介護予防ケアマネジメント業務を実施していくことになるわけです。

「事業対象者」と言われたりしますね。

そのケアマネジメントのプロセスは、次の通りです。

  1. アセスメント
  2. 目標設定
  3. モニタリング実施
  4. 評価
  5. モニタリングの継続

要支援や要介護のケアマネジメントと同じであることがわかります。

ここで、プロセスはおおむね同じだけど、もう一つのケアマネジメントがあることがわかりますね。

制度的な位置づけが異なりますので、以下の比較が分かりやすいので引用しています。

厚生労働省から引用

左が、ケアマネジャーがケアプランを作成するいわゆる「メジャーなケアマネジメント」になります。

右が、地域包括支援センターに位置付けられたもう一つのあまり知られていない「マイナーなケアマネジメント」になります。

介護予防ケアマネジメントの登場

いよいよ、総合事業に位置付けられた新しい介護予防ケアマネジメントについて解説していきます。

総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)において、

要支援者・二次予防事業対象者・一次予防事業対象者は連続性を持ってとらえて介護予防を展開することが大切である。

と見直されて、新しい「介護予防ケアマネジメントとして、再編されました。

再編されたとはいえ、名前が一緒なので、非常にわかりにくいですよね・・・。

以下はその比較表です。

包括的支援事業の介護予防ケアマネジメント
総合事業の介護予防ケアマネジメント
介護予防ケアマネジメントの新旧比較

ここでは、以前から「介護予防ケアマネジメントはあったけど、総合事業で再編された」と理解していただいたらよいと思います。

地域包括支援センターの役割などについては、以下の記事を参考にしてくださいね。

介護予防ケアマネジメントについて

それでは、本題の新しい介護予防ケアマネジメント」についてみていきましょう。

介護予防ケアマネジメントは、介護予防の目的である「高齢者が要介護状態になることをできる限り防ぐ」「要支援・要介護状態になっても状態がそれ以上に悪化しないようにする」ために、高齢者自身が地域における自立した日常生活を送れるよう支援するものであり、従来からのケアマネジメントのプロセスに基づくものである。

介護予防ケアマネジメントは、介護保険制度始まって20年間実施してきたこれまでのケアマネジメントと、同じものと位置づけられていることが分かります。

介護予防ケアマネジメントの特徴

しかし、以下の文言があることを見逃してはダメです。

総合事業における介護予防ケアマネジメントは、第1号介護予防支援事業として地域包括支援センターによって行われるものであり、指定介護予防支援事業所により行われる指定介護予防支援とは異なる

明確に、従来とは「異なる」と説明されています。

冒頭で、2つのケアマネジメントの簡単な比較を行いました。ここではどういった点が異なるのか具体的に見ていきましょう。

以下の2点が指摘できます。

  1. 市町村からの委託業務であること
  2. 自己作成を想定していないこと

介護予防ケアマネジメントは委託業務

従来の介護保険制度では、要支援も要介護においても事業所と利用者の契約によって、ケアプランの作成等をケアマネジャーが代理するケアマネジメントの制度設計でした。

しかし、新しい「介護予防ケアマネジメント」は、従来のよう契約によって、ケアプラン作成を代理しているものではありません。

この点が大きく異なる1つ目のポイントになります。

参考ですが、私が勤めている包括の市町村での介護予防ケアマネジメントの運用は以下の表のとおりです。

介護予防支援重要事項説明書・契約書
介護予防ケアマネジメント重要事項説明書のみ
介護予防支援と介護予防ケアマネジメントの比較

介護予防ケアマネジメントは契約書の必要性はありません。ガイドラインではそのような運用を明示しています。

それは、新しい介護予防ケアマネジメント市町村からの委託業務であることが理由になります。

委託指定との違いについて

ここで、委託指定の違いについて触れておきたいと思います。

ちょっとめんどくさいですが・・・、これからのケアマネジメントを考える上で大切なポイントになります。

サービス事業所の指定サービスを提供しようとする事業者は、サービス種類ごとに定められた指定基準を満たすものとして、事業所ごとに都道府県知事や市町村長の指定を受けることが必要。
委託自治体の業務を民間に委託して行うこと。(引用:ブリタニカ国際大百科事典)
指定と委託についての比較

指定は、定められた指定基準(以下①~③を参照)をきちんとクリアしているかどうか見るものです。定められた基準をクリアして、ようやく、サービスが提供できるものです。介護保険の事業所はほとんど指定ですから、馴染み深いものですね。

  • ① 人員基準(従業者の知識・技能・人員に関する基準)
  • ② 設備基準(事業所に必要な設備についての基準)
  • ③ 運営基準(利用者への説明やサービス提供の記録等、事業を実施する上で
    求められる運営上の基準)

一方、市町村委託とは、非常に端的に言うと「行政が行うべき公共サービスの一部を外部に担ってもらうこと」です。

たとえば、社会福祉法人に委託された地域包括支援センターは、市の委託事業になります。本来、行政が行うべき公共サービスを社会福祉法人に委託しているということになります。

指定委託ではその意味合いが全く異なることが分かります。

公共サービスとしての位置づけ

総合事業の開始によって、介護予防ケアマネジメントは、市町村の事業(公共)に位置付けられたとみることができます

この点が、筆者が注目するとても重要な変更点です。

市町村の公共サービス委託されているのが、地域包括支援センターになります。

これは、中立公平を基本としている「ケアマネジメント」が行政サービスとして、位置付けが拡大したという見方ができます。

居宅介護支援といった介護保険におけるケアマネジメントと制度的には全く異なる点と言えるのではないでしょうか。

ケアプランの自己作成を想定していないこと

もう一つ、大きな異なる点があります。

介護保険においては、自分でケアプランを作成すること(セルフプラン)が認められています。

このセルフプランは本人の「尊厳の保持」という介護保険の大切な側面になります。

セルフプランを含め、ケアプランについては以下にまとめていますので、参照してください。

ですが総合事業では、

ケアプランの自己作成に基づくサービス事業の利用は想定していない。

となっています。これもまた、これまでの介護保険におけるケアマネジメントには無かったことです。

もともと、セルフプランは非常に少ない数ですので、大きな話題としては浮かび上がってはこないですが、大きな変更点です。

また、このような運用が想定されています。

予防給付において自己作成している場合は、現行制度と同様、市町村の承認が必要である(介護給付と異なる)が、加えてサービス事業を利用する場合は、必要に応じ、地域包括支援センターによる介護予防ケアマネジメントにつないでいくことが適当である。

介護予防ケアマネジメントが「市町村からの委託事業」と位置付けになったことで、

ケアマネジメントは行政が責任主体となって提供するものになった。と理解することができます。

ほかの福祉を見れば、そういう行政の責任が数多くあることに気づきます。

例えば、

  • 生活保護申請をして市町村が保護決定する。
  • 市町村が障害福祉サービスにおける支給決定する。

といったことですね。それらと、同一ではないにせよ類似した運用となった。といったところでしょうか。

介護予防ケアマネジメントの簡単なまとめ

ここまでの話を簡単にまとめをしたいと思います。

  • ケアマネジメントは2種類あること。
  • その一つである「介護予防ケアマネジメント」は市町村の事業として公共サービスとして位置づけられている見方ができること。
  • 「介護予防ケアマネジメント」は指定事業でなく、委託事業として地域包括支援センターに委託されていること

2つのケアマネジメントの比較から、今後のケアマネジメントについて筆者が考えることを次に述べていきたいと思います。

ケアマネジメントについての令和6年度介護保険改正の着目点

イギリスのケアマネジメントについて

ケアマネジメントは、中立・公平が原則と介護保険制度開始時から言われ続けてきました。

要介護において、サービスの偏りを防止するために、運営規定や報酬の減算などで規制はあるものの、実態としては、営利法人が運営しているので、完全な中立性は難しいのが現状ではないでしょうか。

ケアマネジメントが先行して展開しているイギリスにおいては、コミュニティケア法によって、地方社会サービス部がケアマネジメントを実施しています。

イギリスのケアマネジャーは、委託された予算に責任を持っており、評価が終了した時点で必要なサービスを購入することができる。(引用:英国のコミュニティケアと高齢者福祉)

とあります。行政の責任においてケアマネジメント実施していると言えます。

日本では介護保険は開始当初、サービス事業所と同じようにケアマネジメントについても「指定事業」として、民間の参入を認めていました。

しかし、総合事業において、介護予防ケアマネジメントは、行政が責任主体と位置づけられたという見方ができれば、これは、イギリスの実践に近い道筋が示されたとも言えるのではないでしょうか。

過去から現在、そして未来のケアマネジメントについて

少し、日本の対人援助について振り返ってみましょう。

これまでケースワークは福祉の分野で、予てから行政が責任主体で実施してきました。

行政サービスでありますが、生活保護のケースワーカーが担当する世帯は100件を数え大変多忙ですね。社会福祉士等の福祉職の入職も随分と多くなりました。

そして、介護保険が開始され、民間が参入したことによって、現在においては、400万人近い方々が、きめの細かいケアマネジメントを享受し、広く国民に浸透しています。

民間参入には賛否両論はありますが、尊厳を守ってきた側面が間違いなくあります。

未来においては、地域共生社会に向けて取り組みが進められていきます。地域共生社会の実現に向けた地域福祉の推進について(厚生労働省)においては、ますます、

環境や人へ働きかけるソーシャルワークの機能を果たす者への期待も大きくなっています。

重層的支援体制整備事業とソーシャルワークの機能については、以下を参照にしてください。

これまでのケースワーク、現在のケアマネジメント、未来のソーシャルワークへの期待は、脈々とつながっている一本の大河のようだと思います。

令和6年度以降のケアマネジメントについて

社会福祉法が令和3年に改正され、重層的支援体制整備事業が位置づけられました。

その中の一つ「包括的な相談支援の体制」の充実があります。これは、行政が責任主体で実施される事業になります。

介護保険におけるケアマネジメントも、高齢者の相談支援という大切な役割を担っています。

令和6年には介護保険法改正が行われます。今期の流れになぞらえると令和4年度から介護保険部会で議論後、法案提出。令和5年度には介護給付費分科会で議議が始まり、介護報酬改定の具体的な内容が決まっていくスケジュールでしょうか。

令和3年度から、総合事業を要介護者まで運用を広げようという内容がありました。実態としては、位置づけられたものの、一部のみにとどまるものでした。令和6年の改正でどのようになるのか、みな注視しています。

これと併せて、私は「ケアマネジメント」が今後どのようになっていくのか大変注目しています。着目点としては、今回触れてきたケアマネジメントの責任主体の変遷です。

例えば次期改正で、

  • 総合事業(訪問介護・通所介護)以外のサービス、例えば福祉用具などが総合事業への移行するのかどうか、今後、介護予防ケアマネジメントの対象範囲が広がる可能性。
  • 要介護軽度者(例えば要介護1・2)が総合事業(デイ・ヘルパー)を利用することが認められた場合、介護予防ケアマネジメントと同様に委託事業なのか

などなど様々なことが考えられ、たとえ話が尽きませんね・・・。

いずれにしても、どのように今後ケアマネジメントが変遷していくのか、大事な着目点になるかと思います。

めざし

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