2024年介護保険制度改正~介護予防ケアマネジメントの現状・課題と今後について~

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地域福祉と包括的支援体制
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介護保険部会で地域包括ケアシステムについての議論が開始されていますね。

2024年に介護保険法の改正が行われます。その改正内容につながる議論がこの介護保険部会で行われています。

その中で、令和4年9月12日の審議会にて、地域包括支援センターについての言及が多数見られた個所を中心に、ここでは取り上げたいと思います。

記事の信頼性

医療・高齢・地域福祉でソーシャルワーカーとして、対人援助職20年以上。現職は、地域福祉機関で管理者をしています。
社会福祉士養成校等で、社会福祉士等の養成に関わって約10年。
有資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、公認心理師。ブログ月間1万PV。

記事の内容

  • 介護予防ケアマネジメントの課題について
  • 増え続ける包括の委託業務!そして、介護予防ケアマネジメントの委託が進まない現状
  • もうすでに起こっています介護人材不足!
  • 紹介したい介護予防支援に関する令和4年度地方分権改革提案
  • 介護保険制度の見直しに関する意見(社会保障審議会介護保険部会)

介護予防ケアマネジメントの課題

いろんな課題が挙がっていますよね。

以下は、第97回社会保障審議会介護保険部会資料からの一部抜粋になります。

介護予防ケアマネジメントの課題

ここでは、上記の二つ目に注目していきます。

一方で、令和4年の地方分権改革に関する提案募集においても、地域包括支援センターからの委託が難しい現状を踏まえ、地域包括支援センターの業務負担を軽減するために、居宅介護支援事業所が介護予防支援を直接担うことができるようにすることを求める提案がなされている。

居宅介護支援事業所が介護予防支援を直接担う」とは、どういったことなのでしょう?

居宅介護支援事業所(以下居宅介護)とは、介護保険下では、ケアマネジャーが在籍している事業所になります。

ちなみに障害福祉では、居宅介護というとホームヘルプサービスを指しますので、よく混同してしまいます。

地域包括支援センターの現況

地域包括支援センターの現況について触れていきましょう。

地域包括支援センター(以下包括支援)が平成18年に設置されてから、

ケアマネジメントについて、

  • 要支援の方を担当するのは包括
  • 要介護の方を担当するのは居宅介護

という分け方をしてきました。

居宅介護は、民間の参入が従前から認められています。

一方、包括はと言いますと、高齢者人口毎に設置数が決まっていますので、数はそんなにありません

また包括の運営の2割が市町村の直営、8割が法人への委託です。

大部分を占める委託先についても、9割が社会福祉法人や医療法人となっていますので、包括居宅介護の民間参入とは実態が異なります

包括については、地域包括支援センターの社会福祉士についてにてすこし詳しく紹介していますので参考にしてください。

以下に簡単にまとめておきます。

種別配置事業所数ケアマネジメント担当
地域包括支援センター高齢者人口毎に設置5,351か所要支援の方民間参入は限定的
居宅介護支援事業所市町村指定37,871か所要介護の方民間参入が拡大
筆者まとめ

このように包括数が少ないですし、また、同時に65歳以上の総合相談の窓口業務(包括的支援事業)も担っているので、予てから、要支援の利用者については、包括から居宅介護へ委託できるとされていました。

同介護保険部会で、以下の表が参考になるので、掲載しておきますね。

要支援の担当はあくまで包括だけれども、居宅介護へ委託できるので、うまく運用してね。というこれまでの話でした。

増え続ける包括の委託業務

包括の機能を強化していこうという流れは以前からあって、その業務の割り振りが課題になっていました。

実際に、私が勤務する包括でも、市の委託事業は年々増えていっています。細かい委託を含めれば、7つほど事業委託をうけています。

これらの事業は包括からの再委託は認められていませんので、包括のみで実施しないといけない。

だけど、人を増やすほどの予算はないので、現状の配置人数で、業務を担っていかないといけない現状があるのです。

介護予防ケアマネジメントの委託が進まない現状

唯一、この要支援のケアマネジメントに関しては、外部に「委託」ができるわけなんですが、その委託を積極的に引き受けてもらえない現状があります。

それは、低すぎる報酬単価が大きな原因の一つです。以下に掲載します。

居宅介護支援事業所要介護1・2
要介護3・4・5
1,076単位
1,398単位
地域包括支援センター要支援1・2438単位
報酬単価 単位/月

要支援1・2は「2ケースで1ケース」と見なす居宅介護支援事業所の運用があります。

でも、438単位×2であったとしても、要介護1一人分にはならないわけです。

要介護も要支援も同じケアマネジメントプロセスですから、居宅介護支援事業所のケアマネジャーとしては、手間としてはほぼ同じになります。

企業によっては、はっきりと「うちは要支援は担当できません」と方針をとっているところもあります。

損得勘定は簡単にできるので、居宅介護支援事業所の運営主体が営利を目的とする株式会社であれば、当然の決定とも言えるでしょう。

現場では、なかなか「委託先が見つからない」のです。

介護保険部会議事録からの意見をみてみる

2022年9月12日第97回社会保障審議会介護保険部会議事録が公表されたので、その中から本稿と関連すると思う、各委員の発言を以下に抜粋します。

  • 介護予防のケアプランの作成は単価が低い一方、作成負担がかなりあるので、そこについてもさらなる簡素化を検討
  • 委託が難しい要因となっているのは、直接担えないことではなく、委託料の問題が大きいと考えております
  • 手間とコストを考えると、一律に4,000円という委託料ではとても引き受けられないとの声がありました
  • 委託を受けても介護予防プランの様式上、再度、地域包括支援センターでのチェックを受けなければならない
  • 地域包括支援センターの業務負担の軽減は不可欠でございまして、これには介護予防ケアマネジメント業務の居宅介護支援事業所への委託も重要でございます。
  • 予防プランをどうするのか。包括の業務としてずっと位置づけるのかどうか。委託をしやすくするための仕組みをどうするのか。予防プランについては、包括の業務かどうかについて、そろそろ分岐点に来ているのだろうと感じています

委員の意見は、総じて「予防プランを何とかしないといけないよ」という方向でした。

包括の現任者としては大変ありがたい。議事録を読んでいくと「そうなんです。めっちゃ考えてくれてますね!」という感想です。

もうすでに起こっている介護人材不足

なので、この介護保険部会での「地域包括支援センターからの委託が難しい現状」という文言をしっかり踏まえて論議を進めてほしいと一現任者として思います。

さらに「要介護」ですら、「今、いっぱいなんで・・・。」と担当をすんなり受けてもらえていないことも増えてきました。

そして、要支援者の訪問介護もおんなじで、ヘルパーステーションへヘルパーの依頼しても手配に時間がかかっています。実際にヘルパーさんがいないとマッチングできないし、訪問介護の管理者さんも大変です。

まだ、2025年になっていないですが、間違いなく介護人材不足がすでに起こっているし、特養入所待機のように、在宅サービス手配待ちの日数がどんどん伸びていると感じています。

介護予防支援に関する令和4年度地方分権改革提案

最後に、第97回社会保障審議会介護保険部会で掲載された

「地域包括支援センターからの委託が難しい現状を踏まえ、地域包括支援センターの業務負担を軽減するために、居宅介護支援事業所が介護予防支援を直接担うことができるようにすることを求める提案」の具体的内容を見ていきたいと思います。

この論議の発端になっているのは、「令和4年 地方分権改革に関する提案募集 提案事項」にあります。

内閣府 検討専門部会について

この専門部会は、内閣府に設けられており、第138回提案募集検討専門部会 議事次第・配布資料から見ることができます。

今回の介護保険部会の資料では、さいたま市の名前のみが挙がっていますが、この「等」には宮城県、仙台市、春日部市、入間市、富士見市、江戸川区、三鷹市、相模原市、平塚市、海老名市、浜松市、草津市、大阪市、高松市、熊本市、大分県、沖縄県が含まれています。

やや、都市部が多いのでしょうか?めざしも、指定都市等に属する身なので、近い認識になっているのかもしれませんね。

提案団体からの意見

一現任者として、提案団体からの意見が大変頷けたし「そうだ。そうだ」と思いながら、読むことができましたので、ここに掲載したいと思います。

○地域包括支援センター職員の業務負担が多く、人員不足の状態がある。
○予防の対象者が増えているが、委託を受けてくれる事業所が減ってきているため支障が生じている。
○当市も、提案団体と同様、委託可能な居宅介護支援事業所が見つからないといった支障事例がある。委託先を見つけるために時間を割かなければならず、本来業務である地域支援事業に時間がかけられない状況である。
○高齢者人口や認知症高齢者の増加により、業務量が増大しているにも関わらず、専門職の確保が困難な状況である。
〇指定介護予防支援の介護報酬が安価であることを理由に居宅介護支援事業者が受託に積極的ではなく、委託先の事業所を確保することが困難である。
〇包括的支援事業の実施においても、高齢者虐待対応や権利擁護支援によってセンター職員の負担が増大し疲弊している。
○令和3年度の介護報酬改定により、指定居宅介護支援事業所への委託が進むよう「委託連携加算」が新設されたが、利用者1人一回限りの加算であることで、受託者委託者双方に事務負担が増し、委託が進むような状況には至っていない。
○地域包括支援センターからの委託料が少ないことから、委託を受け付けない居宅介護支援事業所が少なくない。
〇居宅介護支援事業所では、ケアプランの逓減制があることから、介護予防ケアプランを受託すると逓減制の対象件数に組み込まれることから、受託に消極的な居宅介護支援事業所が多い。
〇介護予防ケアプランは、居宅ケアプランと同程度の業務量であるにも関わらず、その基本報酬が非常に低いことから、居宅介護支援事業所に支払う委託料も少なく、居宅介護支援事業所としても、積極的に受託するような状況にはない。

そして、この内閣府設置の専門部会の意見が大変重要と思ったので、以下に紹介したいと思います。

提案募集検討専門部会からの主な再検討の視点(重点事項)
第1次ヒアリングで、高齢化の進展に伴い業務負担の更なる増加が見込まれる中、地域包括支援センターの持続可能性を確保することは極めて重要であり、地方公共団体とも連携し、同センターの業務の合理化等に取り組んでいく旨の説明があったが、早急に具体の改善策を講じるべきではないか。第2次ヒアリングまでに、提案趣旨・内容を踏まえつつ、同センターの持続可能性をどのように確保していくのか、見解を示していただきたい。
提案団体によれば、ケアプランの作成件数のうち委託の割合が半数以上であるものの、ケアプラン作成以外の事務は残り、左記加算では委託件数の増加にはつながらないこと等から、委託では抜本的な解決になっていないとのことである。
これらを踏まえれば、地域包括支援センターのみに依存するのではなく、指定を受けた事業者と行政との連携の仕組みを構築した上で、事業者の指定対象を同センター以外にも早急に広げるべきではないか。

居宅介護も、要介護だけでなく、要支援も直接ケアマネジメントが行えるようにする。制度の仕組みを大きく変える提案が今回出されています。

介護保険制度の見直しに関する意見(社会保障審議会介護保険部会)

これまでの議論が整理されて、令和4年12月20日の社会保障審議会介護保険部会から「介護保険制度の見直しに関する意見」が出されました。

その意見の中で、地域包括支援センターの体制整備の一環として、介護予防ケアマネジメントに関する意見(P16)が述べられていますので、以下に抜粋します。

〇 こうした地域包括支援センターの業務負担軽減を進めるに当たり、保険給付として行う介護予防支援について、地域包括支援センターが地域住民の保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設であることを踏まえ、介護予防支援の実施状況の把握を含め、地域包括支援センターの一定の関与を担保した上で、居宅介護支援事業所に介護予防支援の指定対象を拡大することが適当である。

これまで、地域包括支援センターのみが介護予防支援の指定を受けることができていましたが、意見では、包括よりもはるかに多い事業所数である居宅介護支援事業所へ指定拡大するといった方向性が示されました。

しかし、次のような疑問が残ります。

『はたして、介護予防支援の指定を現在の居宅介護支援事業所は取ろうとするのか?』

私の信頼している在宅のケアマネジャーたちに聞きますが、

  • 「指定取るかな~?」といったそもそも積極的でない意見や、
  • 「指定は一応取るけど、要支援の担当は増やすことはできない」など、指定拡大となっても実質は同じ。

こういった反応が多くあって、疑問は個人的には全然払しょくされません・・・。

いずれにしても、ここで触れてきたように現行の居宅介護(要介護)と介護予防(要支援)との報酬単価の格差を是正が同時に必要と思えてなりません。

めざし

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