変わりゆく資格 ~主任介護支援専門員のこれからのことを多職種と比較して~

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地域福祉と包括的支援体制
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記事の信頼性

医療・高齢・地域福祉でソーシャルワーカーとして、対人援助職20年以上。現職は、地域福祉機関で管理者をしています。
社会福祉士養成校等で、社会福祉士等の養成に関わって約10年。
有資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、公認心理師。ブログ月間1万PV。


地域包括支援センターで勤務していると、「包括的継続的ケアマネジメント業務」の関係で、地域で活躍する主任ケアマネジャーらと意見交換をすることが多くなります。

その意見交換の中で最近「更新研修」や「法定外研修」についてのいろんな意見を聞くことがある。内容としては「5年前とかなりガラッと変わった」ということです。

平成28年度から、主任介護支援専門員として継続的な資質向上を図るため、更新制度が導入されることとなり、主任介護支援専門員更新研修が新設されました。

大阪府主任介護支援専門員更新研修

ケアマネジャーは必ず研修を受けなければならない職種なので、逃れようのないものになっています。そして、研修の内容は「地域課題を捉えなさい」となっていて、更新研修でもそればかりに・・・、というのを聞きます。

そして研修を修了したケアマネジャーはとても戸惑っていて「どうやってやればいいの?」と臨床で実践しようとするとたちまち困ってしまっている現状があります。
私は地域包括支援センターに勤務している関係から、配置基準にある「保健師」と「社会福祉士」そして「精神保健福祉士」がどんな風に変わって来たのかをここで少し紹介して、これからのケアマネジャーに必要な心構えなどの手掛かりにしたいと思います。

社会福祉士の役割拡大

まずこのサイトでも折に触れている「社会福祉士」についてみていきましょう。社会福祉士の教育カリキュラムは必要に応じて、見直されてきました。
このカリキュラムの変更は当サイトでも詳しく説明しています。

平成19年の見直し

平成19年に社会福祉士は教育内容(厚生労働省)が見直されました。
見直しの理由としては、介護保険制度などが始まって、社会福祉士の取り巻く環境が大きく変化したためです。今後の社会福祉士に求められる役割が整理されました。その時に、定義に追加されたのが、以下の「連絡・調整」という文言です。

抜粋:厚生労働省

これまで「相談」の専門職だったのが、それプラス「いろんな関係者と連絡・調整する仕事でもあるんだ」ということが、追加されたということですね。社会福祉士への役割が広がってきたということです。
現在、「連絡」・「調整」は業務としては当然なのですが、実は社会福祉士において「連携」といったことは、後付けということです。

精神保健福祉士の役割拡大

次は「精神保健福祉士」です。精神保健福祉士の支援対象は、非常に限定的です。

「精神科病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け、又は精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者」

精神保健福祉士規定

対象としているのは、病院に通院している患者さんだったり、事業所の利用者のみを対象としていることがこの規定から理解できます。

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案(令和4年10月26日提出)が提出され、衆議院・参議院にて可決されました。
厚生労働省から第210回国会(令和4年臨時会)提出法律案が提示されていて、その中に精神保健福祉士に関する大切な資料を以下に抜粋します。

地域の障害者・精神保健に関する課題を抱える者の支援体制の整備

市町村等が実施する精神保健に関する相談支援について、精神障害者のほか精神保健に課題を抱える者(※)も対象にできるようにするとともに、これらの者の心身の状態に応じた適切な支援の包括的な確保を旨とすることを明確化する。また、精神保健福祉士の業務として、精神保健に課題を抱える者等に対する精神保健に関する相談援助を追加する。

法律案要綱(精神保健福祉士法の一部改正)

第八 精神保健福祉士法の一部改正
一 精神保健福祉士の業務に、精神障害者及び精神保健に関する課題を抱える者の精神保健に関する相談を追加すること。(第二条関係)
二 その他所要の改正を行うこと。

これまで、さまざまな論議の流れがあって、精神保健福祉士の業務拡大することになりました。

紹介したように社会福祉士と精神保健福祉士2つの福祉の資格に共通する点としては、相談業務を中心に担うという職務から、関係者と連携することや、対象者の拡大といった「職種の役割の拡大」があったことが指摘できます。

看護師の役割について

包括に在籍するのは、福祉職だけでなく保健師や経験のある看護師といった医療職も配置されています。そういった機関は実は珍しくて、保護課や福祉課は文字通り、福祉職ですし、保健センターには保健師や行政セラピスト(理学療法士・作業療法士)医療職が中心です。

さて、看護職はどんなふうに変わってきたのでしょうか。私は、保健師の実習指導を行い、在宅看護の単元を通じ、保健師養成にわずかですが携わってきました。看護を考える上で明かせないのが「生命力の消耗を最小にする」という理念です。健康な状態に向かっていくために、スピーディーに環境整備を整えていくことが重要なのです。
近年、看護についても養成カリキュラムの変更がありました。患者のいのちをまもるための医療は欠かせないので、看護は「医療モデル」にて医療を患者に提供してきました。そして同時に、人権・自立・尊厳を重視して、人々の 「生活の質」 の向上にも貢献するといった「生活を支える医療、地域の中で提供される看護」が、現在の看護の世界では大変注目されています。

対象者の「生きること」を支えるという、看護の基本となるものを理解すること

地域・在宅看護の基盤

新カリキュラムのテキストですが、これを通読すると看護師の役割もまた変化してきていることが掴むことができました。地域福祉や地域医療に関わる看護師の方にはお勧めです。

これまで看護の活躍の場は、病院や施設といった療養の場でしたが、「暮らしの場」へ移行しているのです。
看護においても従前の「医療モデル」から、生きることや人間関係、社会関係にも着目する「生活モデル」が大切とされてきています。
従来から福祉職はこういった「生活モデル」を重視して、クライエントの価値観をその中心にして、取り巻く環境面にアプローチし社会的、文化的な領域を含めて支援を目指してきました。
近年、看護職もその職種の根底に「生活モデル」を導入してきていることが、分かりますね。

まとめ

社会福祉士、精神保健福祉士、看護師をみてきましたが、時代に合わせて、専門職の役割は変化したり拡大したりしていることをここでは知ることができます。
ですので、学ぶべきことは、ケアマネジャーもまた例外なく「変化していくのだ」という事実です。
これからのケアマネジャーの役割は「地域課題を捉えるよう拡大している」ということを踏まえていく必要があるのだと思います。

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