私が現在、地域福祉でソーシャルワークをしていて、新任ソーシャルワーカーに思うことや、実習指導を行っていて思うこと、それと、社会福祉士養成校で、相談援助演習を行っていて思うこと、現場の人間として、やっぱりこれは伝え切りたいことを挙げたいと思います。
当ブログ「めざし」の意味はこの「目指す」意味がはいっているので!この記事は、気合い入れて書いているので、文章量が多くなってしまっています。目次をつけているので、活用していただければ幸いです。
自分を理解する(自己覚知)に焦点を当てて、自分を見つめなおす勇気を持ち続けること。
自分自身を見つめなおすということは普段なら行わないですよね。私の学生時代であれば、周りから叱られた時に「そんなにダメだったかな」と、そこそこ?反省?するぐらいです。
ソーシャルワーカーとしての養成は、大学入学後20歳前後から始まります。社会的にも自立してくると、個人としての価値観はもちろんのこと、人格もしっかり形成されています。
ただ、自分を客観視して見つめなおす機会がたくさん用意されているわけでありません。
ソーシャルワーカーとして、対人援助職として専門性を身につけていく上では、この「自己覚知」がどうしても必要になります!これは避けては通れません。
でも、
「先生、私は自己覚知とかしている暇はないんです」
何年か前、学生(中年期の方)にこのように言われたことがありました。
この自己覚知に強い抵抗を感じたりしたら、臨床に入ってからとってもしんどいです。現に、その学生は実習中、自己理解について強い指摘を実習指導者から受けて、とても辛そうな様子でした。
きちんと自己覚知できなければ、私は現場で、何人もの援助者がバーンアウトしていくのを見てきました。
どうして自己覚知が難しいか・・・、自己覚知は時として、自分自身の嫌なところ、ネガティブなところもふくめて見つめなおすことになるからです。気分の良くない要素を含んでいます。
良い引用があるので参考にしましょう。
自己覚知
自分自身をより客観的に見つめることができる力です。効果的な援助のためには、援助者が自分自身の感情や態度を認識しておくことが重要です。自分はどんな考え方をしがちか。どのようなタイプのクライエントには共感しやすく、逆にどのようなタイプのクライエントには苛立ちを覚えがちなのか。
多くの援助者の持つ特徴が援助関係の形成に関係してきます。このような自分自身の特徴を冷静に振り返り、援助の障害になっている自分の考え方や行動が理解でき必要に応じて軌道修正していくことが大切です。
この「自己覚知」ができる力というものは援助者にとって「必要不可欠」なものです。
引用:渡辺律子 相談面接理論と実際
ソーシャルワークは素晴らしいです。それが体現できれば、権利を擁護するスーパーマンでしょう。
でも、
理想のソーシャルワーカーと生身の自分がたちまちいっしょになりません。
変身ベルトは存在しないのです。そこは当然、不一致になります。
自己覚知は、その作業途中で自己否定に陥りやすい。私はそう思っています。
例えば
自分はソーシャルワーカーなんだから、そんな風にクライエントのことは思ってはダメだ。
と、現場に入れば思ったことないでしょうか?自分のソーシャルワーカー像と、生身の自分がずれればずれるほど、自分はダメだと思ってしまいがちです。
ですので、
そんな風に思ったの自分の反応は、これまで培ってきた大切な人生なんだ。
というとらえ方をしてほしい。
現任者として続けるためには、自分を客観視できる自己覚知によって、軌道修正できればそれでいいんです。
また、自分の価値観もまた年月を通して、変わっていきますので、学生時代や新任で終わることなく、勇気をもって続けることが大切だと思っています。
どんな自分の人生も「クライエントに役立てる」ことができるので、ソーシャルワーカー自身が資源になろう。
突然ですが、みなさんの人生はどんな風だったでしょうか。振り返ってみてください。
例えば、ソーシャルワーカーのあなた自身が、
自分の子どもが病気で、看病が本当に大変でした。
というエピソードを持っていたとします。同じような境遇の方がクライエントだったら、誰よりもクライエントのことをあなたが理解できるのではないでしょうか。
ソーシャルワーカーは生活を支援します。生活は続けていけば、人生になります。
例えば、ソーシャルワーカー自身も、いろいろな人生のキャリアがありますね。
結婚して、子どもを育てながら仕事がしたいです。
もあれば、
シングルで、仕事をバリバリして充実しています。
もあるだろうし、
親の介護をしながら仕事するキャリアもあるだろうし、本当にさまざまでしょう。
ピア・サポートという言葉が私たちにはあります。
援助者のどんな人生でも、クライエントの役に立つのです。ソーシャルワーカー自身も、さまざまな社会資源に囲まれて社会生活を営む人間であるからです。
私自身も、20年関わってきてその実感は強まるばかりです。自分の人生経験が支援にどんどん活かされていきます。例えば、家の購入(中古ね)・子育て・子供の病気や親の介護いろいろ経験したことで、クライエントの状況がすぐイメージできます。
そこで注意してほしいポイントがあります。ソーシャルワーカーが資源になるためには、転移や逆転移に敏感でなければならないのです。
ここで転移について引用です。
クライエントがかつて経験した感情や経験、または自分に向けている内的感情を援助関係に投影することを、「転移」という。
転移は、クライエントの対人関係の歴史や特徴、または内的感情を理解する資源であり、臨床診断や援助の方向を検討する上で貴重な資料であるといわれる。
引用:尾崎 新 ケースワークの臨床技術
難しいですよね。例えて、かみ砕きましょう。
私(めざし)は背が高い方なのですが、DVを受けていた女性から、
怖いから横に立たないでください。
と居宅で言われたことがあります。夫は背が高い方でしたので、そのつらい経験から援助者へ投影した結果ですね。
この転移から、DVを受けていた女性に面談するとき、座って面談するようにしました。援助を行う上で、とても大切な情報になるわけです。
次は逆転移の説明をしますね。
一方、援助関係の中で、援助者に生じる感情や反応は、「逆転移(あるいは対抗転移)」と呼ばれる。逆転移には、いくつかの種類がある。まず、クライエントから受けとるさまざまな印象も逆転移である。また、援助者がクライエントとは直接関係のない個人的感情をクライエントに向ける逆転移もある。「昔の恋人に似ているから、心惹かれる」などである。さらに、援助者の個人的な心理的・社会的欲求がクライエントに向けられることもある。
引用:尾崎 新 ケースワークの臨床技術
これも難しいので、具体例を挙げます。
例えば、私の逆転移であれば、父親が九州の出身だから、九州なまりのクライエントに勝手に親しみが沸く。といったことになります。
みなさんにもいろんな人生経験から、クライエントへ逆転移を起こします。
「顔が好きなタイプだわ」
とか、
「声のトーンがちょっと苦手」
とかですね。これは悪いことではなく、至極当然のことです。
先ほどのDVを受けていたクライエントと同じことが、ソーシャルワーカーにも起こっているわけです。それを逆転移と呼んでいます。
援助者の感情の重要性を「逆転移はクライエントを理解する『受信器』であり」、「援助者は、自分に生じるさまざまな感情を意識化し、吟味することによって、はじめての判断や見通しをもつことができる」とのべている。こうした意味で、逆転移は活用するという視点から検討すべきである。
引用:尾崎 新 ケースワークの臨床技術
1つめの自己覚知の分野になるかもしれませんが、この逆転移を援助に活用しましょうとここでは説かれているのです。ここで注目してほしいのが、
自分に起こった逆転移を否定しないことです。
具体例を順を追ってあげますので見ていきましょう。
- クライエントのことがあんまり好きになれない(外に出せないソーシャルワーカーの心の声)
- それは、理屈っぽい別れた彼氏と似ているから(まず意識化する!これ大事)
- そして、この逆転移を否定しない。(私はソーシャルワーカーだから、そんなこと思っちゃダメだと、新人は否定しがちです。)
- これは、逆転移なんだ。(客観視できることが重要です。)
- 活用する方法としては、例えば、理屈っぽいところがあって、こだわりが強い傾向が他者とのコミュニケーション障害になっているかも?など見立てに活用するなどが考えられるでしょう。
非常に簡素にまとめると、
「自己覚知等を通じて、ソーシャルワーカー自身を資源として活用できるようになる」
そして、これも言いたいことです。
ソーシャルワーカーはクライエントの人権を大事にできるのだから、ソーシャルワーカー自身のことも大事にできる。
自分の歩んできた人生を活かせる仕事が、ソーシャルワーカーであると思います。
チーム作りができるようになるために、多職種を理解しよう。
本当のチームアプローチをソーシャルワーカーはきちんと知っているのか、そして実践できているのか。この疑問がずっと私にはあります。
「社会福祉士や精神保健福祉士の教育課程には、ほとんど多職種を知る機会はありません!」
という声も耳にします。
実習中も、基本的にはソーシャルワーク実習になるので、ヒアリングやインタビューはあってもなかなか多職種ときちんと話し合う時間がないです。
例えば病院では、ライセンスを持ったプロフェッショナルだらけだし、チーム作りは難しさを孕んでいます。
時として、ソーシャルワーカーは多職種とぶつかることがあるでしょう。本人の意思決定や意向を尊重するあまり、生命へのリスク面で多職種と衝突することなどです。
こういったやり取りを私は否定しません。自分がそうやってきたから?・・・それだけではありません。そこは、後半で触れたいと思います。
養成課程の最中は自分の職種の勉強で手いっぱいでしょう。多職種については、知識としては知っている程度になるしかないのではないでしょうか。
多職種の理解は、やはり臨床の中で学ぶしかないと思います。
私が新任のころ先輩から教わったステップを簡単ですが紹介します。
- 話せる多職種を見つけましょう。
- 多職種の視点を知りましょう
- そして、リスペクトできる多職種に出会えたら上出来です。
多職種との醍醐味としては、病院長にむかしむかしに言われてうれしかった言葉があります。
- 「ソーシャルワーカーは患者の意向を代弁する弁護士のような仕事だ。」
- 「退院指示は患者にとっては、冷たい指示だが、ソーシャルワーカーが寄り添う関わりをすればよい。」
- 「退院支援は君たちが関わるほうがうまくいく。」
- 「地域との連携において、非常に重要視しているのがソーシャルワーカーだ。」
結構前ですが、いまだに覚えているので、よっぽどうれしかったのでしょうね。医者からのそういう言葉は胸に残りますね。
これらを踏まえて私としては・・・、
多職種を尊敬し、頼りにしてもいいですが、寄生してはいけません。ある程度の緊張関係は、必要不可欠で、結果それぞれのパフォーマンスを上げることにつながります。
と考えているので、私はぶつかることもあって良いと思っているわけです。
そして、多職種といえば、ライセンスをもった方々だけではありません。ソーシャルワーカーは、地域社会にも目を向けなければいけませんね。これからのソーシャルワーカーに期待されている分野です。
ごみ問題一つ取り上げても、地域の民生委員や自治会の方々の見守りで支えられていることが多くあります。現在、地域福祉に関わらせてもらって、隣近所の方々がこまめに見守っておられることがよく分かります。生活を支援するというのは人と人との「支え合い」なのだと支援の本質を教えてもらっています。
住民の考え方や風土、培われた文化も含めて、地域アセスメントが重要と実感しています。
病院や施設もすごい社会資源の塊ですが、地域も大きな社会資源です。ぜひ、幅広い多職種を理解し、地域を含めたチーム作りができるようになりましょう。
めざし