高次脳機能障害について「行政的」と「学術的」があるのを知ってますか?知っておくべき制度の建てつけについて

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高次脳機能障害ソーシャルワーク
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脳血管疾患の後遺症等で、「高次脳機能障害」と診断される場合があります。高次脳機能障害は目には見えない障害なので、クライエントはいろんな生きにくさを抱えています。リハビリテーション医療に関わっている時、たくさんの高次脳機能障害のクライエントと出会って、いろんなことを学ばせてもらいました。また、個人的には地方公共団体が作成する高次脳のハンドブック作成にも関わらせてもらった経緯もあり、思い入れがあります。

ここでは、高次脳機能障害について、すこし掘り下げて学んでいき、最後には活用できる制度について、紹介していきたいと思います。

それでは、早速、解説していきましょう。

まずは事例をあげたいと思います。

事例①
脳梗塞後遺症にて高次脳機能障害と診断された。ソーシャルワーカーと相談し、精神保健福祉手帳に該当するかどうか相談し、申請準備した。

これは、正解か不正解か。

答えはどちらでもありません。足りていない部分があるのです。

どうしてこういうことが起こってしまうのか、その理由については後半で解説していきます。

まず、事例の通り、ソーシャルワーカーが精神保健福祉手帳を検討した根拠を見ていきましょう。

精神障害者保健福祉手帳について

精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定するものです。対象となる方の中に高次脳機能障害が挙がっています。

対象となる方

統合失調症、うつ病、そううつ病などの気分障害、てんかん、薬物依存症、高次脳機能障害、発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)、そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等)

引用:厚生労働省 下線部筆者

なので、精神保健福祉手帳を申請していこうとするのは、もちろん妥当なのです。精神手帳というと抵抗する方も一定おられます。ソーシャルワーカーは制度のメリットをしっかり伝えていきたいし、クライエントはちゃんと理解した上で申請したいものです。

肝心の不足の部分の解説をしていきたいと思います。

高次脳機能障害は専門的には認知機能全般を指します。本来とても幅が広いものになります。まず、そのことを次から押さえていきましょう

高次脳機能障害について

高次脳機能障害について知っておきたい定義や経過がまとまっていますので、それを見ていきましょう。

「高次脳機能障害」という用語は、学術用語としては、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、 この中にはいわゆる巣症状としての失語・失行・失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが含まれる。

一方、平成13年度に開始された高次脳機能障害支援モデル事業において集積された脳損傷者のデータを慎重に分析した結果、 記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害を主たる要因として、日常生活及び社会生活への適応に困難を有する一群が存在し、 これらについては診断、リハビリテーション、生活支援等の手法が確立しておらず早急な検討が必要なことが明らかとなった。

そこでこれらの者への支援対策を推進する観点から、行政的に、この一群が示す認知障害を「高次脳機能障害」と呼び、 この障害を有する者を「高次脳機能障害者」と呼ぶことが適当である。中略

引用:厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 国立障害者リハビリテーションセンター 下線部筆者

 

難しいですが、簡潔にまとめると、

学術的(専門家にとっての)高次脳機能障害  行政的(支援対策としての)高次脳機能障害

専門家の高次脳機能障害より支援対策としての高次脳機能障害は狭いということを理解しておくとよいです。

同じ高次脳機能障害という言葉を使用しながら、意味が2つあることに注意が必要です。橋と箸みたいでしょうか、高次脳機能障害の場合、漢字も一緒だからもっと厄介です。

高次脳機能障害を診断するのは専門家である医師ですが、もちろん学術的に行います。以下の文章をもう一度見てみましょう。

「高次脳機能障害」という用語は、学術用語としては、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、 この中にはいわゆる巣症状としての失語・失行・失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが含まれる。

ですので、本来失語」も該当しているのがわかります。

ですが、支援対策としての高次脳機能障害には失語は含まれていません。それは、失語においては、身体障害者手帳にすでに含まれているからです。

高次脳機能障害者が活用できる制度について

それでは、以下に、私なりに考えるよりよい事例を挙げます。

事例②
脳梗塞後遺症にて高次脳機能障害と診断された。ソーシャルワーカーと相談し、精神保健福祉手帳と身体障害者手帳に該当するか相談し、申請準備した。

となりますね。

大事なポイントは、

高次脳機能障害の診断があっても、それを受け止める福祉制度は、後付けで立てつけられたもので、その仕組みが縦割りになってしまっている。

なので、事例①のような不足が起こりやすくなるわけです。

診断は医師がもちろんします。診断によってクライエントが享受できる支援対策はその歴史から複雑になりがちです。そこをコーディネートするのがソーシャルワーカーの役割になります。現任のソーシャルワーカーはもっと知らないといけないし、そして当事者にも知ってもらって、しっかりと福祉を享受して欲しいと思います。

今回の、高次脳機能障害者の活用できる制度のあれこれは、「手帳」についての活用を中心に解説しました。この記事が皆さんにとって良いきっかけとなれば幸いです。

めざし

この記事は、以下の書籍を参考に解説しました。高次脳にかかわるソーシャルワーカーにとっては必携ですので、よろしければご参照ください。

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