ここでは、「受容」について社会福祉士や介護、保育、看護に従事する現任者に分かりやすく、その意味やプロセス・過程を解説していきたいと思います。
受容するには、「真剣な態度で傾聴する」「共感的態度」などよく目にするのですが、傾聴と一言でいっても主観的だし、何が真剣な傾聴なのか分かりにくさもあります。
だけど、現任者は目の前のクライエントのために「受容する力」を身に着けたいと思っているわけですし、そういった方に読んでいただいて、一緒に成長したいと思っています。
記事の信頼性
医療・高齢・地域福祉でソーシャルワーカーとして、対人援助職20年以上。現職は、地域福祉機関で管理者をしています。
社会福祉士養成校等で、社会福祉士等の養成に関わって約10年。
有資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、公認心理師。ブログ月間1万PV。
バイスティックについて
適切な援助関係の構築について、やはり外せないのはバイスティックの7原則です。
対人援助職であれば、この「バイスティックの原則」を聞いたことが一度はあると思います。現在では、ケアワークにおいてもこの原則は大変重要で介護福祉士のテキストでも見ることができます。
私が一部講座を担当している市独自の支援員用テキストの中でも紹介されています。(すごく薄いテキストなんですけど💦その中でも触れられていてビックリ。)
適切な援助関係、信頼関係を構築するための原理
適切な援助関係、信頼関係を構築するための原理が丁寧に記されていますので、このケースワークの原則を手掛かりに考えていきましょう。
発行されてから、すでに60年以上経過しているのに、この7つの原則は対人援助職にとって大変重要視され続けています。
原則1 クライエントを個人として捉える(個別化)
原則2 クライエントの感情表現を大切にする(意図的な感情の表出)
原則3 援助者は自分の感情を自覚して吟味する(統制された情緒的関与)
原則4 受けとめる(受容)
原則5 クライエントを一方的に非難しない(非審判的態度)
原則6 クライエントの自己決定を促して尊重する(クライエントの自己決定)
原則7 秘密を保持して信頼感を醸成する(秘密保持)
バイスティックの原則
といった7つの原則があるのですが、今回はその一つ「受容」の項目に着目して掘り下げていきたいと思います。
実は、この「受容」の中で、特に自己覚知(バイスティックは自己理解と表現していますが)がとても大切だと、何度も書籍の中で指摘しているのです。
自己覚知について
自己覚知についても、対人援助職にとっては欠かせないといわれているのですが、一方で難しい知的作業ですので、これについては以下の記事で解説しています。
是非、参考にしてくださいね。
既に対人援助職のみなさんは、受けとめる(受容)は、当たり前のように日々の業務の中で、実践なさっていると思います。
また、これから援助職を目指す方にとってはまず必要となる、馴染み深い「受容」について、見ていきたいと思います。
受け止める(受容)
受容と聞くと、『受けとめる』とか、利用者さんの話を『傾聴する』ことだよとか、一般的にはそういった説明が多いし、イメージだと思います。
バイスティック氏がこれまでの先行文献をまとめて、対人援助職としての原則にこの「受容」を位置付けました。
その中で「クライエントを受けとめる」というものは、3段階に分けて整理することができると説明しています。
これをまずはみていきましょう。
①感知すること
ケースワークの原則 p110
(受けとめつつあるものを客観的に見つめなければならない)
②援助を目的として理解すること
(それぞれの事例において、いかなる原因がクライエントに影響を及ぼしているのか、またその原因がクライエントにとってどのような意味を持っているのか)
③クライエントのもつ現実を多様な角度から適切に認識すべき
「受容」のプロセスを分かりやすく3段階に整理しています。
- まず相手を「感知」する。
- そこから、援助を目的として「理解」して、
- 多様な角度から適切に「認識」する。
という3つの段階です。
ここで指摘したいのはどの段階においても、とっても「客観性」が求められているという点です。
受容は、主観的な印象なのですが、実は、客観的に実践する行為だとうことが分かりますね。
とはいえ実践の中での「原則」の展開は難しい
では、どうすれば、実践の中で展開しやすいのでしょうか?
一現場の援助職としては、こういった「原則」をどんなふうに現場で展開するのか、そこに悩むわけです。
研修に参加したり、教科書を読めば、それはわかるし理解できた。でも、次の日の臨床では忘れてしまっているし、実践できているのか分からない・・・。
みなさんは、そんなことはありませんか?わたしは日々そんな感じです💦。
ですので、私はすべてこれを『自分に問いかける形』で変えてみると、『とっても良いチェックになる。』と考えましたので、それを紹介したいと思います。
受容の自己チェック方法
自分が「受容」をちゃんと行えているのかどうか、自己チェックをしていきましょう。
- わたしは客観的に冷静に、利用者の状況を感知できているか?
- わたしは援助を目的として、利用者のどんな原因が、生活に影響を及ぼしているのか理解しているか?
- わたしは主観的や単純化させずいろんな角度から適切に認識できているか?
といったところです。
具体的に例えば・・・、
質問① 感知について
①わたしは客観的に冷静に見つめ、利用者の状況を感知できているか?
の質問には、
「今日は、午前中から仕事が忙しくてバタついていて・・・、👉質問①👉焦っていて私は案外冷静じゃないかも💦」
「どうしてこんなに感情的なの?怒っている人はどうしても苦手だなぁ・・、👉質問①👉いや冷静にみたら、そういう気質なのかな?客観的には・・・」
といった自答自問を私は面談の前や面談中にします。
いつも、自分自身が冷静でいれるわけではないので。
質問② 理解について
②わたしは援助を目的として、利用者のどんな原因が、生活に影響を及ぼしているのか理解しているか?
の質問には、
「ああ、このクライエントは自分と一緒の境遇で気の毒だなぁ・・・。👉質問②👉いやいや『援助を目的』に理解するのだった。ちょっと感傷的になりすぎてるかなぁ💦」
自分と境遇が似ているクライエントに出会うこともしばしばありますが、その時は「わかるなあ!」とすぐに寄り添うことができそうです。
ですが、あくまで援助を目的として理解する必要があるんだというところが、大切です。
質問③ 認識について
③わたしは主観や決めつけをせずに、いろんな角度から適切に認識できているか?
の質問には、「大好きな利用者が言っていることだから信じよう・・・、👉質問③👉いやまてよ・・、家族はどう考えてるのかな?」
「常識的に考えて、クライエントの行動はちょっとオカシイな。👉質問③👉いや、これは自分の主観かな?どうかな?」
援助職も価値観をもった一人間なので、色眼鏡を当然持っています。
この色眼鏡を無しに「認識」することは難しいので、色眼鏡を持ちながら、いろんな角度から認識しようとすることが大切と思います。
まとめ
人の話を「傾聴したよ」といっても、非常に解りずらいし、どういう態度が受容的なのか、判断がなかなか難しいと思います。
バイスティックがまとめた「受容というプロセス」を意識すると、受容という行為が、対人援助職の「技術」として、大変確認がしやすくなります。
対人援助職がちゃんとした「技術」を用いて、クライエントを受容していくためには、常にチェックをしていく必要があると考えています。
いつも100%とはいかないかも知れないですが・・・、なので面接は疲れますよね・・・。
バイスティックの原則をその方法として、活用できると思っています。
一緒に頑張っていきましょうね。