記事の信頼性

医療・高齢・地域福祉でソーシャルワーカーとして、対人援助職20年以上。現職は、地域福祉機関で管理者をしています。
社会福祉士養成校等で、社会福祉士等の養成に関わって約10年。
有資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、公認心理師。
はじめに:現場の悩み
ケアマネジャー等の対人援助職の皆さんは、クライエントとの関わりはじめ、その目的を「介護保険利用」という前提のもと、重要事項説明や契約によって明確にしてきました。しかし、近年、8050問題を抱えた世帯への関わり方において、深刻な悩みに直面しています。
「50代の子が一緒に暮らしているが、主介護者になる子に発達障害がありそうで、話がまとまらない」
このような事例は、決して珍しくありません。私たちが直面している大きな特徴の一つは、「生活課題がはっきりしない」クライエントや世帯と向き合うことが増えていることです。生活課題が明確になっておらず、クライエント自身が問題を主体的に捉えていないため、現場のケアマネジャー等は、その課題整理から始めなければならず、大変困ってしまっているのが現状です。
「現物給付」の限界と「手続的給付」の可能性

困り果てた私たちが手掛かりにできることはないのでしょうか。
現行の介護保険制度は、利用者に対して介護サービスという「現物」を給付する方式(現物給付)です。例えば、ベッドからの立ち上がりに困っているならタッチアップをレンタルする、かがむ動作が辛いのでヘルパーが家事支援をするなど、課題が明らかな場合、「現物給付」は特に有効です。
しかし、専門家から見れば生活課題はあるものの、課題が整理されていなかったり、クライエントの合意形成が成熟していない場合、私たちが考えるプランを交付しようにも難しくて、既存の「現物給付」では対応しきれません。
そこで、ここでは以下の「手続的給付」を手掛かりにしたいと思います。
手続的給付とは、伝統的な社会保障の現金給付や現物給付といった実体的給付につなげることを含め、様々なニーズを抱える個人の自律に向けたプロセス(手続き)への積極的な支援であり、それ自体で固有の価値があるものとして定義している。
対人援助職の支援の“両輪”
ケアマネジャー等は契約上での相談支援という役割において、「現物給付」と「手続的給付」の両方を担っています。特に、8050世帯や身寄り無しの高齢者に関わる際、サービスに繋げたいが繋げられないなどの状況が多くなり、手続的給付のウェイトが高くなってきます。
アセスメントを向上させるために面接技術を学ぶ機会がありますが、これはまさに手続的給付の充実につながります。
例えば、面談によって:
- 自己肯定感が低下している50代の肯定的資質(強み)を引き出す。
- その方の複雑な感情を整理する。
- 生活課題の問題点を要約して課題整理する。
といったような、面接技術を対人援助職の私たちが身につけることによって、整理されていない生活課題をクライエント自身が整理して、解決を方向づける相談支援(手続的給付)の充実を目指していく必要があると思っています。
つながり続けることを目指す「伴走型支援」
つながり続けることを目指すアプローチ(以下「伴走型支援」という。)は、支援者と本人が継続的につながり関わり合いながら、本人と周囲との関係を広げていくことを目指すものです。
伴走型支援は、特に:
- 生きづらさの背景が明らかでない場合。
- 自己肯定感や自己有用感が低下している場合。
- 8050問題など課題が複合化した場合。
- ライフステージの変化に応じた柔軟な支援が必要な場合。
などに有効です。このアプローチを具体化する制度は、本人の暮らし全体を捉え、その人生の時間軸も意識しながら、継続的な関わりを行うための相談支援(手続的給付)を重視した設計となります。
奥田先生の書籍が大変参考になります。
まとめ:支援の入り口を整える
8050問題のような複雑な事例において、手続的給付の視点をもつことで、支援の入り口を整えていくことで、対人援助職の専門性をさらに高める鍵となるはずです。
めざし
